好録音探求

 『演奏者の存在を身近に感じられる録音』を求めて・・・
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ヘンリク・シェリング Henryk Szeryng (Violin)
1967年7月 スイス
F66G 20001/2 (419 307-2) (P)Polydor K.K., JAPAN (国内盤)
好録音度:★★★★

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ヘンリク・シェリング Henryk Szeryng (Violin)
1967年7月 スイス
UCCG-9719/20 (453 0052) (P)1968 Deutsche Grammophon (C)2007 Universal Classics & Jazz (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。15年ぶり2回目の記事の更新です。

思わず居住まいを正して聴きたくなるオーソドックスで格調の高い演奏。 技術的な完璧さはもとより,重音や複数の声部が絡み合う表現など,考え抜かれ,磨き抜かれていて,聴くほどにこの演奏の凄さに感心してしまいます。 しかし,いまだに輝きを失うことのない名演奏だと思う一方で,どっしりと構えた動感の乏しい演奏はさすがに時代を感じさせる古いスタイルだなぁと思うのも正直なところです。

録音ですが,残響感が少なく細やかなニュアンスまで聴き取ることのできる好ましい録音ではあるのですが, やや録音会場の響きがのって音色に癖があり,透明感や音の伸び,ヌケが阻害され,古臭い音色になってしまっているのが残念に思います。

この演奏はシェリング2回目の全集録音で,LPの時代に最初に購入して聴き込んだ思い出深いものです。 当時から高評価を得ていた名盤で,現代でもその高評価が続いているのも頷けます。 メジャーレーベルということもあって,何度も再発売され続けていますね。

現在現役で流通しているのはOIBPリマスタリングされたものだと思います。 CD化当初の盤と聴き比べてみると,それなりに鮮明さが改善されていました。 買い直した価値はあったかなと思います。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
フランチェスコ・テオピーニ Francesco Teopini (Classical Guitar)
1967年7月 スイス
28 December 2014 - 14 January 2015, Palazzo di Assisi, Perugia, Italy
95424 (P)(C)2016 Brilliant Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

クラシック・ギターによる演奏。 実に生真面目に丁寧に仕上げています。 教科書的で遊びがなく,またギターを活かすような独自編曲もあまりされていません。 あまりワクワクする演奏ではないのですが,じっくり聴くには良いと思います。 技術的にもそつがなく全く問題ありません。

録音ですが,少し残響はあるものの,ギターそのものの響きを素直に捉えた好録音です。 これも特に優れているとは思いませんが,欠点が少なく,音楽の鑑賞を阻害する要素がほとんどないのが良い点です。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
イェルーン・デ・グルート Jeroen De Groot (Violin)
録音不明(2016年と思われる)
ISBN 978-90-389-2557-8 (P)2016 Jeroen De Groot (輸入盤)
参考: Apple MusicAmazon.co.jp公式Webサイトbol.com

本ディスクは2017年5月17日に取り上げていました(→こちら)。そのときはApple Musicでの試聴だったのですが,やはりディスクを手に入れたいと思い,公式Webサイトからbol.comという通販サイトへ飛んで,そこから注文していました。

そして注文してから待つこと約2ヶ月,運送途中で行方不明になったのではないかと諦めかけていた頃にやっと届きました。 立派な装丁のハードカバーの本で,全集を収めたCD 2枚とドキュメンタリーのDVD 1枚が付属していました。 ドキュメンタリーは2016年3月21日に行われた教会でのコンサートの一部とインタビューが収録されています。 CDはこのコンサートのライヴではなく,おそらく同時期にセッションで収録されたものと思われます。

本自体は結構分厚いのですが,オランダ語,英語,ドイツ語,フランス語,イタリア語,スペイン語,中国語の7カ国語で記載されていて, 分量的には一般的なCDに付属している解説書程度でした。

以下,付属DVDのキャプチャ画面です。

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これはDVDのメニュー画面です。なんちゅう行儀の悪い格好で弾いてるんでしょうか!(^^;

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コンサート会場の教会です。

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楽器のボティにマイクを付けて演奏していますね。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
杉江洋子 Yoko Sugie (Violin)
13-16 December 2016
LeavesHMO HMOC 17839/40 (P)2017 ヒビキミュージック (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jp

CD試聴記」からの転載記事です。

バッハだからといって何か特別なことをされているという感じではありません。 今まで長い年月をかけて積み重ねてこられた手法, すなわちベストパフォーマンスを発揮できるご自身のやり方でこの曲に向き合われたのではないかと思います。 その結果,ごく自然に語りかけてくるような,陰影に富む味わい深い演奏に仕上がっています。 ピリオド奏法を取り入れる演奏が多い昨今, モダン楽器の伝統的なスタイルの延長線上でこのような優れた演奏が生み出されたことを大変うれしく思います。

そして録音ですが,少し残響があり,やや距離感があるために残響の影響を受けているのですが, それでも直接音が主体であり,ニュアンスも伝わってきますし楽器の質感も感じ取ることが出来ます。 もう少し音色に透明感と伸びが欲しいところですが,それでもソロ楽器の録音としてかなり良好な部類に入ると思います。

ということで,演奏も録音も良い,長く聴き続けたいと思える良盤でした。

杉江洋子さんは京都出身,幼少の頃からコンクールで優秀な成績を収められ, 京都堀川音楽高等学校,東京藝術大学・大学院を卒業,神戸室内合奏団,大阪センチュリー交響楽団を経て, 現在は京都市交響楽団の第二ヴァイオリン副首席奏者を務められているとのことです。
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シューマン:幻想曲作品17
シューマン:幻想小曲集作品12
マルタ・アルゲリッチ Martha Argerich (Piano)
録音 1976年
SICC 1843 (P)(C)1976 Sony Music Entertainment (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

私はシューマンのピアノ曲をほとんど聴かないのですが,唯一聴くのがこの幻想小曲集作品12です。誰の演奏だったのかは定かではないのですが,高校生の時にFMのエアチェック(もう死語か(^^;)でたまたまカセットテープに録音していた同曲を長い間聴いていました。シューマンの作品の中ではあまり顧みられない作品かもしれませんが,これが好きなんですよね。ものすごく久しぶりに聴きたくなり,Apple Musicで物色して見つけたのがこのディスクです。昔聴いていた曲のイメージとは少し異なり随分と力強くダイナミックなシューマンだよなぁと思いつつも,この曲の面白さを存分に楽しませてくれる演奏だと思いました。

録音ですが,この力強い演奏を柔らかい響きで包んで聴きやすくしているように思います。ただそのせいで音色がくすんで透明感が失われているのは惜しいと思います。また演出感も強いです。まあピアノの録音としては標準的で悪くはないと思うのですが,やっぱりもっとクリアにすっきりと録って欲しいと思いますね。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ニコライ・マドヤン Nikolay Madoyan (Violin)
録音不明
品番不明 (P)2014 Nikolay Madoyan (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Amazon.co.jpApple MusicYouTube

CD試聴記」からの転載記事です。

オーソドックスで力強くまた整然とした立派な演奏です。 技術的にもかなり巧いです。 演奏上の傷はいくらか散見されるものの,全体のできの良さのほうが勝っているのでほとんど気になりません。特にパルティータ第2番,ソナタ第3番あたりの充実ぶりはなかなかのものです。

録音ですが,残響はやや多く残響時間もかなり長いのですが, 楽器音の直接音成分が支配的で残響はその後方にふわっと広がるように取り入れられているため, 印象は悪くありません。 音色は残響のまとわりつきの影響を受けてやや変化していますが,ニュアンスや質感は十分に伝わってきます。 もう少し直接音に透明感があれば良かったのですが。 でもこれは残響量の割に良いと思います。 私の好みではありませんが,上手く録っていると思います。

この録音,YouTubeでは全曲が公開されており,ディスクでの発売もありそうに見えるのですが,本当にあるかどうかはわかりませんでした。Amazon.co.jpApple Musicでは前半の3曲のみ公開されているという中途半端な状態です。

これを全曲扱いにするか迷いましたが,演奏も録音もそこそこ良かったので,ちゃんと全曲公開されることを期待して全曲扱いとしました。

演奏者のマドヤンはWikipediaによると,1973年生まれアルメニア出身のヴァイオリニストとのことです。
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バッハ:ゴルトベルク変奏曲BWV988
ラミン・バーラミ Ramin Bahrami (Piano)
録音不明
4762820 (P)2004 DECCA (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

Apple Musicでの試聴です。これがバッハの演奏なのか?と思うほど力強くたたきつけるようなタッチに驚くのですが,まるでAIが弾いているのかと思うほど高速でメカニカルな正確さにも目を見張りますし,奇妙な装飾にもニヤッとしてしまいます。そして第26変奏以降のラストに向けて一気にたたみかけるモーレツな演奏! 好きかどうかは別として,間違いなく楽しめます。ここまでぶっ飛んだ演奏はそうないと思います。

さて録音ですが,残響控え目でピアノの音をしっかりと捉えていますが,ちょっと音が硬質です。そしてこれはApple Musicだからかもしれませんが,エンコード歪みっぽいノイズが時折気になり,やや品質が良くないように思います。これはCDで確かめてみたいところなのですが...

最後にリピート表です。すべてのリピートが実行されていました。完璧です。

演奏時間 約80分
リピート表
Aria ○○
Var.01 ○○ Var.02 ○○ Var.03 ○○
Var.04 ○○ Var.05 ○○ Var.06 ○○
Var.07 ○○ Var.08 ○○ Var.09 ○○
Var.10 ○○ Var.11 ○○ Var.12 ○○
Var.13 ○○ Var.14 ○○ Var.15 ○○
Var.16 ○○ Var.17 ○○ Var.18 ○○
Var.19 ○○ Var.20 ○○ Var.21 ○○
Var.22 ○○ Var.23 ○○ Var.24 ○○
Var.25 ○○ Var.26 ○○ Var.27 ○○
Var.28 ○○ Var.29 ○○ Var.30 ○○
Aria da capo ○○

蛇足ですが,このディスクをある中古ショップで見かけたのですが,そのときは別に欲しいものがあり見送りました。こんなに面白いとわかっていたら入手していたのに! ちょっと後悔。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
イェルーン・デ・グルート Jeroen De Groot (Violin)
録音不明
品番不明 (P)2016 Jeroen De Groot (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Apple MusicAmazon.co.jp公式Webサイトbol.com

CD試聴記」からの転載記事です。

力強く勢いがあり,音楽に緩みが全くありません。 演奏はちょっと荒っぽく雑とも思えるところはあるのですが, 上手下手ということではなく,粗くなることを厭わず自分の目指す表現を貫き通しているように思います。 この潔さが良いと思います。

録音ですが,残響感はあまりないのですが,録音環境の響きで音色に濁りが感じられます。 比較的近くで録音しているのか,ニュアンスや質感は伝わってくるので悪くはないのですが, この濁りだけが残念でなりません。

本ディスクはApple Musicで試聴しました。デ・グルートはオランダのヴァイオリニスト。2枚のCDと1枚のDVDが付属したハードカバーの本のようです。Amazon.co.jpでは注文出来なかったので,公式Webサイトからbol.comという通販サイトに飛び,オランダ語と格闘して何とか注文し,到着を待っているところです。送料込みで約€29でした。到着したらまたレポートします。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
デネス・ジーグモンディ Denes Zsigmondy (Violin)
1995年5月
CD JBS 1001/2 Juneau Bach Society (輸入盤)
好録音度:★★★★☆

CD試聴記」からの転載記事です。

気力の漲る意欲的な演奏。 年齢からくる技術的な衰えか,キレが良くないところが散見されますが,ほとんど気になりません。 むしろ勢いのある演奏で味わい深く感じさせるところなど長年の積み重ねを感じさせます。

録音ですが,少し残響が多めなのですが,直接音が主であるため明瞭感の低下や音色への影響は少なく,印象は悪くありません。 もちろん残響を抑えてもっとクリアーに録って欲しかったところですが,これでも十分許容範囲です。

ジーグモンディ氏は1922年生まれ,ハンガリー出身,2014年に亡くなられたとのことです。 これは73歳くらいでの録音になります。

本ディスクは残念ながら現在は入手が難しい状態で,音楽配信も見つけることが出来ませんでした。
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バッハ:ゴルトベルク変奏曲BWV988
小山実稚恵 Michie Koyama (Piano)
2017年2月7-10日 軽井沢大賀ホール
SICC 19032 (P)(C)2017 Sony Music Japan International (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

2017年はアルバム・デビューから30周年で,通算30枚目のアルバムで,初の全曲バッハ,とのことです。私自身は小山さんのディスクはおそらく初めて聴きます。情緒的表現,感情移入は極力抑え,音は短く歯切れ良くはっきりと,上品ですがどちらかといえばストイックに淡々と弾いているように思います。この点,先日取り上げたベアトリーチェ・ラナの演奏とは対照的です。そのせいもあってか,バッハの曲の構造が浮き彫りのようにはっきりと見えてくるようです。気に入りました。

録音ですが,残響は控え目で楽器の音を明瞭に捉えている点は良いのですが,うっすらとベールが被ったようにわずかに音色がくすみ,すっきりと伸びと透明感ある音になっておらず,また,少し音が硬いのが不満です。マイナスポイントが少ないので四つ星半としましたが,正直言うともう少し何とかならなかったのかととても惜しく思います。

最後にリピート表です。すべてのリピートが実行されていました。完璧です。

演奏時間 約75分
リピート表
Aria ○○
Var.01 ○○ Var.02 ○○ Var.03 ○○
Var.04 ○○ Var.05 ○○ Var.06 ○○
Var.07 ○○ Var.08 ○○ Var.09 ○○
Var.10 ○○ Var.11 ○○ Var.12 ○○
Var.13 ○○ Var.14 ○○ Var.15 ○○
Var.16 ○○ Var.17 ○○ Var.18 ○○
Var.19 ○○ Var.20 ○○ Var.21 ○○
Var.22 ○○ Var.23 ○○ Var.24 ○○
Var.25 ○○ Var.26 ○○ Var.27 ○○
Var.28 ○○ Var.29 ○○ Var.30 ○○
Aria da capo ○○
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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲(アコースティック・ギター編曲版)
スティーヴン・ハンコフ Steven Hancoff (Acoustic Guitar)
録音不明
品番不明 (P)(C)2015 (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Amazon.co.jpApple Music

CD試聴記」からの転載記事です。

アコースティック・ギター編曲による演奏。 ナイロン弦のクラシック・ギターによる演奏はよくありますが, スチール弦のアコースティック・ギターによる演奏は滅多に見かけません。 しかも全集ということで,アコースティック・ギターが好きな私にとっては大変うれしいディスクです。この曲集とアコースティック・ギターって,実は結構相性がいいじゃないか!と思ってしまいます。

ギター版ということもあって結構ベース音や和音の追加があります。 ごくまれにあれっ?というような和音がありますが,ほぼ違和感なく聴くことができます。技術的に特に優れているということはありませんが,全く問題はありません。

さて録音ですが,スタジオの残響のない環境で極めてクリアーに明瞭に録っています。 アコースティック・ギターの録音としてはごく普通だと思います。 スチール弦のきれいで伸びのある響きを堪能できます。

詳しくはわからないのですが,ハンコフ氏はジャズ・ギタリストのようです。 編曲および演奏自体はジャズ的なところは全くありません。
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バッハ:ゴルトベルク変奏曲BWV988(ジャズギター編曲版)
Andy Fite
(P)2011 Andrew J Fite
好録音度:★★★★☆
参考: Amazon.co.jpApple Music

Apple Musicでの試聴です。メディアでの販売があるのかどうかはわかりませんでした。ゴルトベルク変奏曲のジャズギター編曲版で,一人で多重録音しているものと思われます。

ジャズ風に拍子を変えたりリズム・パターンを変えたり,難しいところは原曲をとどめないほど編曲したり...(^^;。技術面含めてまぁいろいろと難のある演奏ですが,終始ニヤニヤしながら楽しませていただきました。これに関してはリピートを省略しすぎているとかそんな野暮なことは言いません。演奏者の挑戦に拍手!

録音ですが,このようなジャンルは普通に録れば普通にこれくらいのレベルの録音になります。特に優れているということはありませんが,録音にストレスを感じることなく楽しめるという点で普通に良い録音だと思います。
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バッハ:ゴルトベルク変奏曲BWV988
ベアトリーチェ・ラナ Beatrice Rana (Piano)
2016年11月 ベルリン,テルデックス・スタジオ
Warner Classics 9029588018 (P)(C)2017 Parlophone Records (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

とても評判の良い演奏なので聴いてみました。明瞭なタッチと流れるようなスムーズなフレージング,そして,自然な強弱のうねりなど,モダンピアノの特性を最大限に生かした現代的で洗練された演奏でした。何より感心したのは細かい音型の正確さと淀みのなさで,ここまで滑らかでビシッとテンポにはまった演奏はそんなにないと思います。一方,ゆっくりした変奏でのリズムの意図的な崩しは自然な呼吸感から外れていてちょっと生理的に受け付けないなぁと思うところもありました。とはいえ,これは出色の出来ですね。久しぶりにワクワクする演奏に出会いました。

録音ですが,比較的楽器音をしっかりと捉えているのですが,音色が今ひとつモヤッとしていて立ち上がりの明瞭さ,透明感にやや欠けます。十分許容範囲だとは思うのですが,もう少し付帯音のないクリアな音で録って欲しいものです。惜しいです。

最後にリピート表です。すべてのリピートが実行されていました。完璧です。

演奏時間 約78分
リピート表
Aria ○○
Var.01 ○○ Var.02 ○○ Var.03 ○○
Var.04 ○○ Var.05 ○○ Var.06 ○○
Var.07 ○○ Var.08 ○○ Var.09 ○○
Var.10 ○○ Var.11 ○○ Var.12 ○○
Var.13 ○○ Var.14 ○○ Var.15 ○○
Var.16 ○○ Var.17 ○○ Var.18 ○○
Var.19 ○○ Var.20 ○○ Var.21 ○○
Var.22 ○○ Var.23 ○○ Var.24 ○○
Var.25 ○○ Var.26 ○○ Var.27 ○○
Var.28 ○○ Var.29 ○○ Var.30 ○○
Aria da capo ○○
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
五嶋みどり MIDORI (Violin)
2016年8月8日-11日 ドイツ,ケーテン城
Accentus Music ※NHK BSプレミアムでの放送
好録音度:★★★★☆(Sonata No. 2, 3, Partita No. 2)~★★★★★(Sonata No. 1, Partita No. 1, 3)

CD試聴記」からの転載記事です。

これは2017年の3月にNHK BSプレミアムで放送された番組の感想です。 本CD試聴記では放送番組は基本的には取り上げていないのですが,これは特別に感銘を受けたので取り上げることにしました。 ちょっとタイミングを逸した感はあるのですが...ご了承願います。

演奏自体は2013年の全集とほぼ変わらぬブレない一貫した素晴らしい演奏です。 この演奏を映像で鑑賞出来るのはまさに至福と言うほかありません。

そしてさらに特筆すべきはその録音です。 この曲集はバッハがケーテン宮廷楽長だった頃の作品ということで, 五嶋みどりさんがゆかりの地であるケーテン城を訪れ,城内の幾つかのフロアで録音をされています。 吹き抜けのやや容積のあるフロアでの録音もありますが,小さめの部屋での録音もあります。 コンサートホールやや教会の録音のような豊かな響きは全くありません。 これが好録音につながっています。

ソナタ第2番,第3番,パルティータ第2番はやや広めのフロアで録音されているためか,また, 少しマイクポイントが遠めなのか,部屋の響きが少し感じられますが, ソナタ第1番,パルティータ第1番,第3番はほとんど響きがなく,適正な距離感で極めて明瞭に録られています。 弓が弦に触れるときの微妙な音や左手の運指に伴う演奏雑音を含め,演奏者の発するあらゆる音が克明に聴こえてきます。 質感,音色,ヌケの良さ,どれも申し分ありません。

特に後者は私が理想とする好録音にかなり近いです(→「好録音について考える」をご参照ください)。 残響がないから鑑賞に向かない,音楽的に劣る,といったことは全くありません。 残響の有無と音楽性とは基本的に無関係であるということを,この録音は見事に証明してくれています。

ソナタ第3番とパルティータ第2番がARTE concertというサイトで公開されていました。 録音がベストの楽曲の方ではないので上記の感想が伝わらないかもしれませんが。

この人類の宝のような映像作品,ぜひディスクで発売して欲しいものです。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番,他
イルジー・ヴォディチカ Jiří Vodička (Violin)
2014年2月10,11日,3月12,13日,4月1-3日 プラハ,マルティーネク・スタジオ
SU 4175-2 (P)(C)2014 Supraphon (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。バッハのみのコメントです。バッハ以外の収録曲は下記の通りです。

パガニーニ:『うつろな心』による序奏と変奏曲作品38
クライスラー:レスタチーヴォとスケルツォ・カプリス
エルンスト:シューベルトの『魔王』による大奇想曲作品26
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ ニ短調作品27
パガニーニ:24のカプリース作品1より 第5番,第15番,第24番
ハース:パガニーニの主題による小変奏曲

一聴しただけで技術力の高さがわかるほどキレのある,そして音色の透明さ,美しさのある演奏です。 ヴィブラートを少し強めにかけた演奏は少し古風な雰囲気もあるのですが, 軽やかで若者らしい爽やかさを感じる好演奏です。

録音ですが,やや残響のまとわりつきが気になるものの,直接音が主体であり, 明瞭感,音色の自然さ,ヌケの良さもそこそこ確保されていてまずまず良好と言える録音です。 一般的にも良い録音の部類に入るのではないかと思います。 私としてはもう少し残響を抑えてすっきり録って欲しかったと思いますが,十分許容範囲です。

ヴォディチカ氏は1988年生まれ,チェコ出身のヴァイオリニスト。 本ディスクは26歳頃の録音になると思います。 今後の活躍に期待。
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雨だれのプレリュード~ショパン名曲集
横山幸雄 Yukio Yokoyama
Ishibashi Memorial Hall on 29-30 August 2016
MECO-1036 (P)(C)2017 Muse Entertainment Inc. (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

横山氏のデビュー25周年記念アルバムとのことです。横山氏のピアノはあまり聴いたことがなく,一度聴いてみたいと思っていたところ,ショパンの比較的好きな曲が多く収録されていましたのでこの機会にと思い聴いてみました。収録曲は下記の通りです。

1. アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
2. バラード第1番
3. ノクターン第20番
4. ノクターン第2番
5. 華麗なる大円舞曲
6. 別れの曲
7. 革命のエチュード
8. マズルカ第13番
9. 幻想即興曲
10. 雨だれのプレリュード
11. マズルカ第32番
12. 小犬のワルツ
13. 英雄ポロネーズ
14. 別れの曲によるお別れの作品(2台ピアノによる8手連弾) 横山幸雄(編曲)

まあ想像通りというか,力強い男性的な演奏であり,ショパンの優美な面が希薄なのでちょっとイメージが違うかなと思いながらも,ストレートで明快な演奏を楽しませていただきました。

肝心の録音なのですが,オフマイク気味でホールトーンを豊かに取り入れているために直接音よりも間接音が主であり,演出感が強いです。当然ながらピアノの音色はくすみ気味でクリアさに欠け,ヌケもあまり良くなく,私の好きな録音ではありませんでした。ピアノ録音としては良くあるタイプでまあこんなところかとは思うのですが,個人的には少し残念に思います。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番,パルティータ第2番
オレグ・クリサ Oleh Krysa (Violin)
2016年8月29日,11月28日 神奈川・相模湖交流センター
EXTON OVCL-00615 (P)(C)2017 Octavia Records Inc. (国内盤)
好録音度:★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

往年の巨匠のごとく,古風なスタイルで格調高く奏でられた真面目で立派な演奏です。 年齢からくる技術の若干の衰えは感じるものの,極めて安定しており,含蓄のある演奏を聴かせてくれます。 モダン楽器ですが,バロック・ボウを使っているためか,厳しさの中にも柔らかな表情が見られるのも良いと思います。

録音ですが,やや距離感があり,残響が主で直接音がほとんど感じられず,音色は濁りバランスは崩れ, 本来もっているであろうニュアンスもかなり失われているように思います。 オーディオ品質は良いのかもしれませんが,楽器本来の音色がこんなに失われてしまっては意味がありません。 残念な録音です。

クリサ氏は1942年生まれ,ウクライナ出身で,ダヴィド・オイストラフの高弟とのことです。 1963年のパガニーニ国際コンクール優勝,1966年のチャイコフスキー国際コンクール第3位などの実績のある実力者で, ベートーヴェン弦楽四重奏団の第1ヴァイオリンも務めたとのこと。 これは75歳くらいでの録音になりますが,20年くらい前に録音していてくれたらなぁと思ってしまいます。

なお,このディスクには併録曲としてバッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV1043が収録されています(第2ヴァイオリンは水野佐知香,オーケストラはヴィルトゥオーゾ横浜)。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番
アレクサンドラ・クルス Aleksandra Kuls (Violin)
The Concert Hall of the Krzysztof Penderecki European Centre for Music in Lusławice, Poland.
DUX 1145 (P)(C)2016 DUX (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

併録曲は,ペンデレツキ:ラ・フォリア,プロコフィエフ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ作品115,イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番。

オーソドックスで教科書的に整った演奏。 時折装飾が入るものの,どちらかといえば旧世代の様式を引き継いでいるように思います。 技術的にも優れ,隅々までコントロールが行き届いています。 まだまだ個性を発揮するまでにはなっていませんが,これを起点に伸ばしていけばよいと思います。 今後の成長と活躍に期待。

録音ですが,少し残響感があり音色に影響しているものの,音自体に伸びがあり,印象は悪くありません。 楽器の質感やニュアンスも感じられます。 ソロ・ヴァイオリンの録音としては標準的で,客観的にも良好な部類に入るように思います。

アレクサンドラ・クルスは1991年生まれ,ポーランド出身の若手ヴァイオリニスト。 ヨーゼフ・シゲティ国際コンクール等で優秀な成績を収めたようです。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ナタン・ミルシテイン Nathan Milstein (Violin)
London, Conway Hall (Wembley, Brent Town Hall), 2, 4, 9/1973
POCG-3305/6(423 294-2) (P)1975 Polydor International GmbH (国内盤)
※(1)初期の頃のCD
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jp

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ナタン・ミルシテイン Nathan Milstein (Violin)
London, Conway Hall (Wembley, Brent Town Hall), 2, 4, 9/1973
457 701-2 (P)1975 Polydor International GmbH (C)1998 Deutsche Grammophon GmbH (輸入盤)
※(2)Deutsche Grammophon THE ORIGINALS (OIBPリマスター盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ナタン・ミルシテイン Nathan Milstein (Violin)
1973年2月,4月,9月 ロンドン,コンウェイ・ホール
PROC-2010/1 (P)1975 Deutsche Grammophon GmbH, Berlin (国内盤)
※(3)TOWER RECORDS VINTAGE SA-CD COLLECTION Vol. 3 (タワーレコード企画盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower Records

CD試聴記」からの転載記事です。

ミルシテインが70歳になる頃に録音された2回目の全集。 もしかしたら技術的な衰えがあるのかもしれませんが,そんなことは全く感じさせません。 紛れもなくヴァイオリンによって奏でられている音楽なのに,ヴァイオリンが意識からふっと消え,純粋に音楽だけが鳴り響く感じがするのです。 ヴァイオリンという楽器の持つ制約から音楽を解き放っているとでも言いましょうか。 数多の演奏とは明らかに違う次元・高み・深みに達していると思います。 私が言うまでもありませんが,本当に素晴らしい演奏ですね。

録音ですが,やや多めに残響が取り込まれており,楽器音に被って音色を濁しており, 鮮度やニュアンスを損なう要因になっていますが,それでも楽器音をしっかりと捉えているので許容範囲です。 この程度であればむしろ好む方がいらっしゃるとは思いますが,私としては1回目の全集のようなストレートで生々しい録音でないのが本当に残念でなりません。

なお,(1)の初期の頃のCDに比べ,(2)のOIBPリマスター盤は鮮度が改善され,良い状態になりました。 タワーレコードの企画盤として2017年にSACDハイブリッドで発売された(3)は,さらに付帯音的な雑味が軽減われ,わずかですがさらに改善がみられました。 まあ(2)のOIBPリマスターがそこそこ良い品質でしたので,欲を言わなければ(2)でも十分かもしれません。 とはいえ,最良の状態で復刻されたことは喜びたいと思います。 タワーレコードに感謝!
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ナタン・ミルシテイン Nathan Milstein (Violin)
26 & 31 March 1954(Sonata No.1), 6 February 1956(Partita No.1), 27 December 1956(Sonata No.2), 23-24 March 1954(Partita No.2), 5, 16, 17 March 1956(Sonata No.3), 28 December 1955(Partita No.3), Studio A, 46th Street Studio, NY.
ZDMB 64793 2 3 (P)1955-66 (C)(P)1993 Angel Records(compilation and digital remastering) (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

恐ろしいほどにキレが良く,その潔さが痛快極まりなし! 変な言い方ですが,過剰なまでにコントロールが効きいたオーバーシュートする音楽表現が何とも言えません。 最も覇気のある充実した時期の巨匠の強烈な個性に圧倒される,ものすごく尖った演奏です。 リピートの省略が多いのが残念ですが,時代を思えば仕方なしですかね。

これは1回目の全集録音で,一般的には1973年の2回目の全集の方が評価が高いと思いますが, この1回目の録音も捨てがたいです。 私はむしろ1回目よりこちらの方が好きかもしれません。 ミルシテインの全盛期の魅力がこの全集に凝縮されていると思うのです。

録音はスタジオでのモノラル録音で,わずかに残響が感じられる曲もありますが,その影響はほとんどありません。 少し距離感があって,そのためにわずかに明瞭感,鮮明さが落ちているのが残念ですが, それでもこの時期のモノラル録音としてはかなり良好な状態と言えると思います。 演奏をストレートに生々しく伝えてくれる点を大きく評価しました。 好録音です。

もちろん1950年代半ばの録音なのでクオリティは良いとは言えませんし, マスターテープの問題と思われる音の曇りが感じられるところもあります。 古い録音なのでこれは仕方ありません。

この演奏は時々復刻はされているようですが,もしかしたら今は現役盤がないかもしれません。 入手困難ではないと思いますが...
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ヨーゼフ・シゲティ Joseph Szigeti (Violin)
1959年6月~1960年4月※1
KICC 8585/6 (P)1960 King Record Co., Ltd. Recorded by Omega Record Group, USA (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ヨーゼフ・シゲティ Joseph Szigeti (Violin)
1955年10月17-18(ソナタ),1955年7月(パルティータ第1番),1955年10月18,20日(パルティータ第2番),1956年3月2日(パルティータ第3番) ニューヨーク CBS 30丁目レコーディング・スタジオ
GCAC-1002-3 (P)1955,56 (C)2017 Global Cultures Agency, Inc. (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

シゲティの演奏は孤高の演奏であると高く評価される一方で, 技術的に難があるとか,技術の衰えが否めないとか,たどたどしいとか, いろいろと欠点も指摘され,評価が分かれていると思います。

私も2002年に初めて聴き,最初の感想を書いたときには, 技術的な不安定さが気になってどちらかといえば否定的な感想を持ったため, それ以来手にとって聴き返すことはありませんでした。

高音質盤で復刻されたのを機に,ほぼ15年ぶりに聴き直してみました。 不思議なことに,技術的に難があるとか,衰えが感じられるとか, そういった技術面に課題を残す演奏には全く聴こえませんでした。 彼にとっては演奏を隅々まで完璧に仕上げることよりも, 音楽に全身全霊で魂を込めることの方が優先事項であり, この演奏は彼が進んで選んだ表現様式による完璧に完成された作品そのものなのであろう, と思えてきました(→という自分に一番驚いています(^^;)。

この演奏が好きかどうかはまた別問題なのですが,少なくとも楽しめるようにはなりましたし, いろいろと発見があったのは大きな収穫です。

録音はモノラルで,スタジオで録音されたようです。 曲により多少のばらつきはありますが,残響は少なめで楽器音を明瞭に捉えていて, また,古い録音ですが音の曇りは最小限で聴きやすい録音です。 1955, 56年の録音としてはまずまず良好と言えると思います。

xrcd24の新しい復刻は,わずかながら雑味が減少し,ぼやけたところすっきりとがシャキッとした印象があります。 ただ,旧盤もそれほど悪かったわけでもなく,また,マスターに起因する音の傷は同様にあるため, 驚くほどの改善にまではいかなかったようです。 とはいえ,最良の状態で復刻されたことを喜びたいと思います。

※1: 旧盤のディスクの解説では録音年が1959~60年になっていました。 正しい録音年は1955~56年で,最近のものは訂正されているようです。2002年にこの件について調べた記事を書いていました(→こちらこちら)。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ミシェル・ロス Michelle Ross (Violin)
December 4 and 5, 2013; January 31 - February 2, 2014; March 19-21, 2014 at the American Academy of Arts and Letters, New York
TROY1662/63 (P)(C)2017 Albany Records (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsHMV OnlineiconAmazon.comApple Music

CD試聴記」からの転載記事です。

モダン楽器による演奏。 しなやかで伸びのあるフレージングが素晴らしい好演奏。 滑らかな音の移り変わり,音色の美しさも特筆できます。 技術的にも優れ,コントロールが隅々まで行き届いています。 これは出色の出来映えで,思わず聴き惚れてしまいます。

録音ですが,若干の響きのまとわりつきはあるものの,楽器音を適度な距離感でニュアンス豊かに捉えています。 弓が弦に触れる微妙な感触まで聴き取ることができます。 好録音です。
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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
ヤーノシュ・シュタルケル Janos Starker (Cello)
1992年6月19,20,22-24日 New York,アメリカ芸術文化アカデミー
BVCC-37662-63 (P)1995 Sony BMG (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

4回の全集録音のうちの最後,4回目の録音です。 1992年なので,前回からおよそ8年後,68歳くらいでの録音になると思います。 前回の内向きな演奏に比べると,今回の演奏は,何か吹っ切れたような, 外向きの明るい,そして随分と意欲的な演奏にまた変わっています。 ただ,1960年代以前のような強烈なオーラを放つような演奏ではないので, もの足らなく思う方もおられるかもしれませんが,音楽的にはずっと深まっていると思います。 技術的な衰えもほとんど感じられません。

さて録音ですが,マイクポイントが近めで楽器音を暑苦しいくらいに濃厚に捉えており, 録音レベルも高く,この点では好ましく思います。 音色は少し中域に癖があって,もう少し適切な距離感ですっきりとしていれば良かったと思います。 惜しい録音です。
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バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番,第2番,第3番
ヤーノシュ・シュタルケル Janos Starker (Cello)
録音不明(1984年頃?)
SE-CD 300A (P)1984 Sefel Records (輸入盤)
好録音度:★★★★

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バッハ:無伴奏チェロ組曲第4番,第5番,第6番
ヤーノシュ・シュタルケル Janos Starker (Cello)
録音不明(1984年頃?)
SE-CD 300B (P)1984 Sefel Records (輸入盤)
好録音度:★★★★

CD試聴記」からの転載記事です。

4回の全集録音のうちの3回目の録音です。 1984年頃の録音で,同氏の60歳の節目で録音されたものと思われます。 カナダのSefel Recordsというマイナーレーベル?への録音です。

2回目の全集の録音からおよそ20年後の録音ということになりますが,前回の録音に比べると全く印象が異なります。 前の演奏は「剛」という印象でしたが,これは正反対の「柔」です。 20年の月日が経っているとはいえ,同じ人の演奏とは思えない変わり様です。 人に聴かせる演奏というよりは,自分との対話という趣で,至極内省的な印象を受けます。 インパクトは全くなく,個性的な表現もありませんが,バッハと正面から向き合った味わい深い演奏だと思います。

録音ですが,残響は控え目に抑えられ,極めて自然な雰囲気と音色で捉えられていて好感が持てます。 どちらかといえば地味で冴えない印象であり,もう少し抜けよく伸びのある音で録って欲しかったとは思いますが, 演奏の内容にはとてもマッチしている録音だとは思います。

マイナーレーベルのためあまり流通していないようで,入手性が良くないのが残念です。 同氏に期待する演奏とは方向性が少し違うのでは?と思うものの,演奏の出来自体はすごく良いと思うので, 何らかの形で復刻されたら良いのに,と思います。 こういうのこそタワーレコードさんの出番だと思うんですけどね(^^;。
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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
ヤーノシュ・シュタルケル Janos Starker (Cello)
1963年4月,1965年9月
PHCP-20390/1(432 756-2) (P)(C)1991 Philips Classics (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

4回の全集録音のうちの2回目の録音で,同氏を代表する録音の一つではないかと思います。 ギンギンに楽器を鳴らしてなんの迷いも感じさせない直線的・鋭角的な演奏。 懐の深さや味わいのある演奏ではありませんが,ここまで攻めた演奏をされるとこれはこれで説得力があります。 今となってはこれだけの技術をもってこのような演奏をされる方はほぼおられないのではないかと思うと, これは貴重な歴史の遺産に違いないと思います。

録音ですが,優秀録音で有名なMercuryの録音で,この録音もその生々しい音の捉え方でその一つに数えられると思うのですが, こうして聴いてみると録音場所の響きがやや多めに被っており,マイク位置も離れているようで, 音色はくすみ,ニュアンスも失われているように思いました。 悪くはないとは思うのですが,Mercuryとしてはあまり良くないという印象です。

付属の日本語解説書では次のような記載があります。 「歴史的な録音をCD化するに当たって,制作および技術部門が目標としたのは, オリジナル・テープとフィルム・マスターの音を出来る限り正確に,そして完璧に捉えることだった。 (中略) CD化に当たっては,オリジナルのマスター・テープだけが使用され,実際の録音の時と同じくイコライザーやフィルターを使うことはなく, コンプレッサー,リミターなども一切使われなかった。(後略)」 可能な限りマスターに忠実なデジタル化,CD化が行われたようです。

ちなみに拙ブログの姉妹サイト「CD試聴記」で,1951年の4曲の録音と,1957-59年の1回目の全集録音のレビュー記事を掲載しています。よろしければご参考に。

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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
ヤーノシュ・シュタルケル Janos Starker (Cello)
1963年4月15日(第2番),1963年4月15,17日(第5番),1965年9月7日(第1番),1965年9月7,8日(第6番),1965年12月21,22日(第3番,第4番) ニューヨーク,ファイン・レコーディング・スタジオ
SSHRS-011/014 (P)1964/1966 Universal International Music B.V. / Stereo Sound REFERENCE RECORD (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Stereo Sound

ステレオサウンド誌の独自企画盤で,音匠仕様レーベルコートのシングルレイヤーのSACD 2枚とCD 2枚の4枚組です。 オリジナルマスターの音を再現することを目指しており,マスターテープから無加工,無修正でデジタル化したもので, そのため,聴きやすくするためのイコライジングやマスターテープに起因するノイズカット,ドロップアウトの修正などもされていないということです。

先に挙げた従来盤と聴き比べてみると,音の鮮度という点では確かに改善が見られました。 また,従来盤にあった左右レベルの微妙なバランス崩れや位相ずれのような違和感も緩和されているように思いました。 一方で,ドロップアウトまでいかないまでもテープの劣化による音の荒れのようなものは逆に目立って聴こえるので一長一短があるようにも思いました。

全体的には改善の方が大きいためこの復刻の価値は十分にあると思いますが, 従来盤もマスターに忠実なデジタル化を目指したものであったため, 改善が明らかとはいえびっくりするほどの差はなく, 従来盤のおよそ4倍程度の値段が妥当かどうかはそれぞれの人の価値観によると思います。 やはりこれはオーディオマニア向けの商品ですね。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
モブセス・ポゴシアン Movses Pogossian (Violin)
December 21-23, 2015 and May 28-30, 2016, at the Recording Studio of the UCLA Herb Alpert School of Music
New Focus Recordings FCR178 (P)(C)2017 Movses Pogossian (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Amazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

モダン楽器による演奏。全体に遅めのテンポで音楽が進行していきます(なのでCD 3枚組になっています)。 ところどころ大見得を切るようなところはありますが,どちらかといえば正統派の演奏であり, 技術的にもそこそこの安定感があり,ハーモニーも美しく,充実感があります。 正直言うと中にはテンポが遅すぎてちょっと退屈してくる楽章ないことはないのですが, 全体としては好印象でした。

録音ですが,スタジオでの録音のためか,残響は控え目であり,適切な距離感で, 弦の上を滑る弓の微妙なニュアンスも聴き取ることが出来る好録音です。 オーディオ的にはあまり魅力がない録音かもしれませんが, 地味でもこういう楽器の質感を大事にした録音が良いのです。

ポゴシアン氏はソ連出身のヴァイオリニストで,1986年第8回チャイコフスキー国際コンクール ヴァイオリン部門第7位の入賞歴があります。 現在はアメリカのUCLA Herb Alpert School of Musicのヴァイオリンの教授とのことです。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番,パルティータ第2番,第3番
エンリコ・オノフリ Enrico Onofri (Violin)
2014年12月16日-22日 イタリア,クレマ "Cascina Giardino music hall"
UZCL-1030 (P)(C)2016 Anchor Records (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

バロック楽器による演奏。 旧来からの演奏とはかなりアプローチの異なる表現が随所に見られるという点でかなり面白い演奏です。 ある意味バロック楽器による演奏に対する期待を裏切らないと言えます。 ただ,これが好きかと言われると話は別で, 個人的にはバロック楽器の演奏のこういうところが苦手でどうしてもこれが好きにはなれません。 すみません。

録音ですが,録音会場の響きを活かした,そして過剰になることなく高いクオリティで収録しているという点で優秀録音と言えるかもしれない録音なのですが, やはり響きを重視した録音のトレードオフとして楽器音がくすんでおり, 楽器の質感が失われているのが私としては好ましく思えません。 もっと楽器そのものの音色を大事にした録音をして欲しいものです。
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グリーグ:ホルベルク組曲(弦楽合奏版,ピアノ独奏版)
スクームスヴォル:ホルベア変奏(ピアノと弦楽合奏のための)
1B1(室内管弦楽団),クリスチャン・イーレ・ハドラン(ピアノ),他
2014年1月2-5日,2月24-26日 ノルウェー,スタヴァンゲル・コンサートホール
Simax PSC1332 (P)2014 Grappa Musikkforlag AS (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

Apple Musicでの試聴です。

ホルベルク組曲はグリーグの中で最も好きな作品です。このディスクでは,原曲のピアノ独奏版と作曲者自身の編曲による弦楽合奏版,そして,このホルベルク組曲を題材に,ジャズシーンで活躍しているスクームスヴォルが主導して即興的な演奏を試みたという「ホルベア変奏」が収録されています。

ピアノ独奏版は初めて聴いたのですが,これがまたかっこいいですねぇ。前奏曲にワクワクしますし,第3曲のガヴォットとミュゼットも洒落ています。ピアノ曲としては有名ではないと思いますが,弦楽合奏版を知っていれば結構楽しめる曲ですね。弦楽合奏版もスピード感と勢いがあり良いと思います。ホルベア変奏は...少し聴いたのですがあまり興味が湧かずパスしてしまいました(^^;。

録音ですが,弦楽合奏もピアノもまずまずの録音で,残響は適度であり録り方も自然で悪くないのですが,少し雑味というか濁りがあり,透明感や音の伸びに欠けています。録音機材があまり良くないのかもしれません。惜しいと思います。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
タマーシュ・フェイェシュ Tamás Fejes (Violin)
4-7, November 2014 and 28-31, October 2015
DMV120 (P)2016 Tamás Fejes (C)2016 Discovery Music & Vision (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jp

CD試聴記」からの転載記事です。

モダン楽器での演奏。オーソドックスで,丁寧に演奏しています。 技術的にも安定感があり,音色も綺麗です。 特徴のある演奏ではありませんが,耳に馴染みやすく安心して聴くことが出来ます。

録音ですが,少し残響が多めで楽器音に被り,まとわりつきが少々鬱陶しく感じられます。 また音色も影響を受けて癖がついており,明瞭感も落ちています。 そんなに悪くはないとはいえ,もう少しすっきりとヌケ良く明瞭に録って欲しいところです。 ちょっともったいないと思います。

タマーシュ・フェイェシュはハンガリー出身のヴァイオリニストで, フィルハーモニア管弦楽団に所属していたことがあり, 最近はロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団のアシスタント・リーダー,および, 英国王立スコットランド音楽院の非常勤講師とのことです。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
浦川宜也 Takaya Urakawa (Violin)
2015/12/16, 2016/1/30, 2/26, 3/28, 4/14-15
HMOC 17836/8 (P)(C)2016 HIBIKI MUSIC (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

浦川氏34年ぶり2回目の録音で,75歳くらいの録音になります。 年齢からくる技術の衰えはいかんともし難く,相当キレはなくなり音程を含めて不安定です。 しかし,年齢の積み重ねから来る得も言われぬ味わいがあるのも確か。

録音ですが,少し残響が取り入れられていて音色に影響を与えているものの, 楽器の質感もそれなりに感じられて,まずまず良好です。 ソロヴァイオリンの録音として標準的で悪くありません。 もちろん個人的にはもっと残響を抑えてすっきりした音で録って欲しいと思っています。

でもやはりこれは浦川氏とご縁がある方に向けたアイテムなのでしょうね。

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