好録音探求

 『演奏者の存在を身近に感じられる録音』を求めて・・・
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番
アレクサンドラ・クルス Aleksandra Kuls (Violin)
The Concert Hall of the Krzysztof Penderecki European Centre for Music in Lusławice, Poland.
DUX 1145 (P)(C)2016 DUX (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

併録曲は,ペンデレツキ:ラ・フォリア,プロコフィエフ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ作品115,イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番。

オーソドックスで教科書的に整った演奏。 時折装飾が入るものの,どちらかといえば旧世代の様式を引き継いでいるように思います。 技術的にも優れ,隅々までコントロールが行き届いています。 まだまだ個性を発揮するまでにはなっていませんが,これを起点に伸ばしていけばよいと思います。 今後の成長と活躍に期待。

録音ですが,少し残響感があり音色に影響しているものの,音自体に伸びがあり,印象は悪くありません。 楽器の質感やニュアンスも感じられます。 ソロ・ヴァイオリンの録音としては標準的で,客観的にも良好な部類に入るように思います。

アレクサンドラ・クルスは1991年生まれ,ポーランド出身の若手ヴァイオリニスト。 ヨーゼフ・シゲティ国際コンクール等で優秀な成績を収めたようです。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ナタン・ミルシテイン Nathan Milstein (Violin)
London, Conway Hall (Wembley, Brent Town Hall), 2, 4, 9/1973
POCG-3305/6(423 294-2) (P)1975 Polydor International GmbH (国内盤)
※(1)初期の頃のCD
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jp

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ナタン・ミルシテイン Nathan Milstein (Violin)
London, Conway Hall (Wembley, Brent Town Hall), 2, 4, 9/1973
457 701-2 (P)1975 Polydor International GmbH (C)1998 Deutsche Grammophon GmbH (輸入盤)
※(2)Deutsche Grammophon THE ORIGINALS (OIBPリマスター盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ナタン・ミルシテイン Nathan Milstein (Violin)
1973年2月,4月,9月 ロンドン,コンウェイ・ホール
PROC-2010/1 (P)1975 Deutsche Grammophon GmbH, Berlin (国内盤)
※(3)TOWER RECORDS VINTAGE SA-CD COLLECTION Vol. 3 (タワーレコード企画盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower Records

CD試聴記」からの転載記事です。

ミルシテインが70歳になる頃に録音された2回目の全集。 もしかしたら技術的な衰えがあるのかもしれませんが,そんなことは全く感じさせません。 紛れもなくヴァイオリンによって奏でられている音楽なのに,ヴァイオリンが意識からふっと消え,純粋に音楽だけが鳴り響く感じがするのです。 ヴァイオリンという楽器の持つ制約から音楽を解き放っているとでも言いましょうか。 数多の演奏とは明らかに違う次元・高み・深みに達していると思います。 私が言うまでもありませんが,本当に素晴らしい演奏ですね。

録音ですが,やや多めに残響が取り込まれており,楽器音に被って音色を濁しており, 鮮度やニュアンスを損なう要因になっていますが,それでも楽器音をしっかりと捉えているので許容範囲です。 この程度であればむしろ好む方がいらっしゃるとは思いますが,私としては1回目の全集のようなストレートで生々しい録音でないのが本当に残念でなりません。

なお,(1)の初期の頃のCDに比べ,(2)のOIBPリマスター盤は鮮度が改善され,良い状態になりました。 タワーレコードの企画盤として2017年にSACDハイブリッドで発売された(3)は,さらに付帯音的な雑味が軽減われ,わずかですがさらに改善がみられました。 まあ(2)のOIBPリマスターがそこそこ良い品質でしたので,欲を言わなければ(2)でも十分かもしれません。 とはいえ,最良の状態で復刻されたことは喜びたいと思います。 タワーレコードに感謝!
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ナタン・ミルシテイン Nathan Milstein (Violin)
26 & 31 March 1954(Sonata No.1), 6 February 1956(Partita No.1), 27 December 1956(Sonata No.2), 23-24 March 1954(Partita No.2), 5, 16, 17 March 1956(Sonata No.3), 28 December 1955(Partita No.3), Studio A, 46th Street Studio, NY.
ZDMB 64793 2 3 (P)1955-66 (C)(P)1993 Angel Records(compilation and digital remastering) (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

恐ろしいほどにキレが良く,その潔さが痛快極まりなし! 変な言い方ですが,過剰なまでにコントロールが効きいたオーバーシュートする音楽表現が何とも言えません。 最も覇気のある充実した時期の巨匠の強烈な個性に圧倒される,ものすごく尖った演奏です。 リピートの省略が多いのが残念ですが,時代を思えば仕方なしですかね。

これは1回目の全集録音で,一般的には1973年の2回目の全集の方が評価が高いと思いますが, この1回目の録音も捨てがたいです。 私はむしろ1回目よりこちらの方が好きかもしれません。 ミルシテインの全盛期の魅力がこの全集に凝縮されていると思うのです。

録音はスタジオでのモノラル録音で,わずかに残響が感じられる曲もありますが,その影響はほとんどありません。 少し距離感があって,そのためにわずかに明瞭感,鮮明さが落ちているのが残念ですが, それでもこの時期のモノラル録音としてはかなり良好な状態と言えると思います。 演奏をストレートに生々しく伝えてくれる点を大きく評価しました。 好録音です。

もちろん1950年代半ばの録音なのでクオリティは良いとは言えませんし, マスターテープの問題と思われる音の曇りが感じられるところもあります。 古い録音なのでこれは仕方ありません。

この演奏は時々復刻はされているようですが,もしかしたら今は現役盤がないかもしれません。 入手困難ではないと思いますが...
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ヨーゼフ・シゲティ Joseph Szigeti (Violin)
1959年6月~1960年4月※1
KICC 8585/6 (P)1960 King Record Co., Ltd. Recorded by Omega Record Group, USA (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ヨーゼフ・シゲティ Joseph Szigeti (Violin)
1955年10月17-18(ソナタ),1955年7月(パルティータ第1番),1955年10月18,20日(パルティータ第2番),1956年3月2日(パルティータ第3番) ニューヨーク CBS 30丁目レコーディング・スタジオ
GCAC-1002-3 (P)1955,56 (C)2017 Global Cultures Agency, Inc. (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

シゲティの演奏は孤高の演奏であると高く評価される一方で, 技術的に難があるとか,技術の衰えが否めないとか,たどたどしいとか, いろいろと欠点も指摘され,評価が分かれていると思います。

私も2002年に初めて聴き,最初の感想を書いたときには, 技術的な不安定さが気になってどちらかといえば否定的な感想を持ったため, それ以来手にとって聴き返すことはありませんでした。

高音質盤で復刻されたのを機に,ほぼ15年ぶりに聴き直してみました。 不思議なことに,技術的に難があるとか,衰えが感じられるとか, そういった技術面に課題を残す演奏には全く聴こえませんでした。 彼にとっては演奏を隅々まで完璧に仕上げることよりも, 音楽に全身全霊で魂を込めることの方が優先事項であり, この演奏は彼が進んで選んだ表現様式による完璧に完成された作品そのものなのであろう, と思えてきました(→という自分に一番驚いています(^^;)。

この演奏が好きかどうかはまた別問題なのですが,少なくとも楽しめるようにはなりましたし, いろいろと発見があったのは大きな収穫です。

録音はモノラルで,スタジオで録音されたようです。 曲により多少のばらつきはありますが,残響は少なめで楽器音を明瞭に捉えていて, また,古い録音ですが音の曇りは最小限で聴きやすい録音です。 1955, 56年の録音としてはまずまず良好と言えると思います。

xrcd24の新しい復刻は,わずかながら雑味が減少し,ぼやけたところすっきりとがシャキッとした印象があります。 ただ,旧盤もそれほど悪かったわけでもなく,また,マスターに起因する音の傷は同様にあるため, 驚くほどの改善にまではいかなかったようです。 とはいえ,最良の状態で復刻されたことを喜びたいと思います。

※1: 旧盤のディスクの解説では録音年が1959~60年になっていました。 正しい録音年は1955~56年で,最近のものは訂正されているようです。2002年にこの件について調べた記事を書いていました(→こちらこちら)。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
ミシェル・ロス Michelle Ross (Violin)
December 4 and 5, 2013; January 31 - February 2, 2014; March 19-21, 2014 at the American Academy of Arts and Letters, New York
TROY1662/63 (P)(C)2017 Albany Records (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Amazon.comApple Music

CD試聴記」からの転載記事です。

モダン楽器による演奏。 しなやかで伸びのあるフレージングが素晴らしい好演奏。 滑らかな音の移り変わり,音色の美しさも特筆できます。 技術的にも優れ,コントロールが隅々まで行き届いています。 これは出色の出来映えで,思わず聴き惚れてしまいます。

録音ですが,若干の響きのまとわりつきはあるものの,楽器音を適度な距離感でニュアンス豊かに捉えています。 弓が弦に触れる微妙な感触まで聴き取ることができます。 好録音です。
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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
ヤーノシュ・シュタルケル Janos Starker (Cello)
1992年6月19,20,22-24日 New York,アメリカ芸術文化アカデミー
BVCC-37662-63 (P)1995 Sony BMG (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

4回の全集録音のうちの最後,4回目の録音です。 1992年なので,前回からおよそ8年後,68歳くらいでの録音になると思います。 前回の内向きな演奏に比べると,今回の演奏は,何か吹っ切れたような, 外向きの明るい,そして随分と意欲的な演奏にまた変わっています。 ただ,1960年代以前のような強烈なオーラを放つような演奏ではないので, もの足らなく思う方もおられるかもしれませんが,音楽的にはずっと深まっていると思います。 技術的な衰えもほとんど感じられません。

さて録音ですが,マイクポイントが近めで楽器音を暑苦しいくらいに濃厚に捉えており, 録音レベルも高く,この点では好ましく思います。 音色は少し中域に癖があって,もう少し適切な距離感ですっきりとしていれば良かったと思います。 惜しい録音です。
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バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番,第2番,第3番
ヤーノシュ・シュタルケル Janos Starker (Cello)
録音不明(1984年頃?)
SE-CD 300A (P)1984 Sefel Records (輸入盤)
好録音度:★★★★

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バッハ:無伴奏チェロ組曲第4番,第5番,第6番
ヤーノシュ・シュタルケル Janos Starker (Cello)
録音不明(1984年頃?)
SE-CD 300B (P)1984 Sefel Records (輸入盤)
好録音度:★★★★

CD試聴記」からの転載記事です。

4回の全集録音のうちの3回目の録音です。 1984年頃の録音で,同氏の60歳の節目で録音されたものと思われます。 カナダのSefel Recordsというマイナーレーベル?への録音です。

2回目の全集の録音からおよそ20年後の録音ということになりますが,前回の録音に比べると全く印象が異なります。 前の演奏は「剛」という印象でしたが,これは正反対の「柔」です。 20年の月日が経っているとはいえ,同じ人の演奏とは思えない変わり様です。 人に聴かせる演奏というよりは,自分との対話という趣で,至極内省的な印象を受けます。 インパクトは全くなく,個性的な表現もありませんが,バッハと正面から向き合った味わい深い演奏だと思います。

録音ですが,残響は控え目に抑えられ,極めて自然な雰囲気と音色で捉えられていて好感が持てます。 どちらかといえば地味で冴えない印象であり,もう少し抜けよく伸びのある音で録って欲しかったとは思いますが, 演奏の内容にはとてもマッチしている録音だとは思います。

マイナーレーベルのためあまり流通していないようで,入手性が良くないのが残念です。 同氏に期待する演奏とは方向性が少し違うのでは?と思うものの,演奏の出来自体はすごく良いと思うので, 何らかの形で復刻されたら良いのに,と思います。 こういうのこそタワーレコードさんの出番だと思うんですけどね(^^;。
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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
ヤーノシュ・シュタルケル Janos Starker (Cello)
1963年4月,1965年9月
PHCP-20390/1(432 756-2) (P)(C)1991 Philips Classics (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

4回の全集録音のうちの2回目の録音で,同氏を代表する録音の一つではないかと思います。 ギンギンに楽器を鳴らしてなんの迷いも感じさせない直線的・鋭角的な演奏。 懐の深さや味わいのある演奏ではありませんが,ここまで攻めた演奏をされるとこれはこれで説得力があります。 今となってはこれだけの技術をもってこのような演奏をされる方はほぼおられないのではないかと思うと, これは貴重な歴史の遺産に違いないと思います。

録音ですが,優秀録音で有名なMercuryの録音で,この録音もその生々しい音の捉え方でその一つに数えられると思うのですが, こうして聴いてみると録音場所の響きがやや多めに被っており,マイク位置も離れているようで, 音色はくすみ,ニュアンスも失われているように思いました。 悪くはないとは思うのですが,Mercuryとしてはあまり良くないという印象です。

付属の日本語解説書では次のような記載があります。 「歴史的な録音をCD化するに当たって,制作および技術部門が目標としたのは, オリジナル・テープとフィルム・マスターの音を出来る限り正確に,そして完璧に捉えることだった。 (中略) CD化に当たっては,オリジナルのマスター・テープだけが使用され,実際の録音の時と同じくイコライザーやフィルターを使うことはなく, コンプレッサー,リミターなども一切使われなかった。(後略)」 可能な限りマスターに忠実なデジタル化,CD化が行われたようです。

ちなみに拙ブログの姉妹サイト「CD試聴記」で,1951年の4曲の録音と,1957-59年の1回目の全集録音のレビュー記事を掲載しています。よろしければご参考に。

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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
ヤーノシュ・シュタルケル Janos Starker (Cello)
1963年4月15日(第2番),1963年4月15,17日(第5番),1965年9月7日(第1番),1965年9月7,8日(第6番),1965年12月21,22日(第3番,第4番) ニューヨーク,ファイン・レコーディング・スタジオ
SSHRS-011/014 (P)1964/1966 Universal International Music B.V. / Stereo Sound REFERENCE RECORD (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Stereo Sound

ステレオサウンド誌の独自企画盤で,音匠仕様レーベルコートのシングルレイヤーのSACD 2枚とCD 2枚の4枚組です。 オリジナルマスターの音を再現することを目指しており,マスターテープから無加工,無修正でデジタル化したもので, そのため,聴きやすくするためのイコライジングやマスターテープに起因するノイズカット,ドロップアウトの修正などもされていないということです。

先に挙げた従来盤と聴き比べてみると,音の鮮度という点では確かに改善が見られました。 また,従来盤にあった左右レベルの微妙なバランス崩れや位相ずれのような違和感も緩和されているように思いました。 一方で,ドロップアウトまでいかないまでもテープの劣化による音の荒れのようなものは逆に目立って聴こえるので一長一短があるようにも思いました。

全体的には改善の方が大きいためこの復刻の価値は十分にあると思いますが, 従来盤もマスターに忠実なデジタル化を目指したものであったため, 改善が明らかとはいえびっくりするほどの差はなく, 従来盤のおよそ4倍程度の値段が妥当かどうかはそれぞれの人の価値観によると思います。 やはりこれはオーディオマニア向けの商品ですね。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
モブセス・ポゴシアン Movses Pogossian (Violin)
December 21-23, 2015 and May 28-30, 2016, at the Recording Studio of the UCLA Herb Alpert School of Music
New Focus Recordings FCR178 (P)(C)2017 Movses Pogossian (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Amazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

モダン楽器による演奏。全体に遅めのテンポで音楽が進行していきます(なのでCD 3枚組になっています)。 ところどころ大見得を切るようなところはありますが,どちらかといえば正統派の演奏であり, 技術的にもそこそこの安定感があり,ハーモニーも美しく,充実感があります。 正直言うと中にはテンポが遅すぎてちょっと退屈してくる楽章ないことはないのですが, 全体としては好印象でした。

録音ですが,スタジオでの録音のためか,残響は控え目であり,適切な距離感で, 弦の上を滑る弓の微妙なニュアンスも聴き取ることが出来る好録音です。 オーディオ的にはあまり魅力がない録音かもしれませんが, 地味でもこういう楽器の質感を大事にした録音が良いのです。

ポゴシアン氏はソ連出身のヴァイオリニストで,1986年第8回チャイコフスキー国際コンクール ヴァイオリン部門第7位の入賞歴があります。 現在はアメリカのUCLA Herb Alpert School of Musicのヴァイオリンの教授とのことです。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番,パルティータ第2番,第3番
エンリコ・オノフリ Enrico Onofri (Violin)
2014年12月16日-22日 イタリア,クレマ "Cascina Giardino music hall"
UZCL-1030 (P)(C)2016 Anchor Records (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

バロック楽器による演奏。 旧来からの演奏とはかなりアプローチの異なる表現が随所に見られるという点でかなり面白い演奏です。 ある意味バロック楽器による演奏に対する期待を裏切らないと言えます。 ただ,これが好きかと言われると話は別で, 個人的にはバロック楽器の演奏のこういうところが苦手でどうしてもこれが好きにはなれません。 すみません。

録音ですが,録音会場の響きを活かした,そして過剰になることなく高いクオリティで収録しているという点で優秀録音と言えるかもしれない録音なのですが, やはり響きを重視した録音のトレードオフとして楽器音がくすんでおり, 楽器の質感が失われているのが私としては好ましく思えません。 もっと楽器そのものの音色を大事にした録音をして欲しいものです。
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グリーグ:ホルベルク組曲(弦楽合奏版,ピアノ独奏版)
スクームスヴォル:ホルベア変奏(ピアノと弦楽合奏のための)
1B1(室内管弦楽団),クリスチャン・イーレ・ハドラン(ピアノ),他
2014年1月2-5日,2月24-26日 ノルウェー,スタヴァンゲル・コンサートホール
Simax PSC1332 (P)2014 Grappa Musikkforlag AS (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

Apple Musicでの試聴です。

ホルベルク組曲はグリーグの中で最も好きな作品です。このディスクでは,原曲のピアノ独奏版と作曲者自身の編曲による弦楽合奏版,そして,このホルベルク組曲を題材に,ジャズシーンで活躍しているスクームスヴォルが主導して即興的な演奏を試みたという「ホルベア変奏」が収録されています。

ピアノ独奏版は初めて聴いたのですが,これがまたかっこいいですねぇ。前奏曲にワクワクしますし,第3曲のガヴォットとミュゼットも洒落ています。ピアノ曲としては有名ではないと思いますが,弦楽合奏版を知っていれば結構楽しめる曲ですね。弦楽合奏版もスピード感と勢いがあり良いと思います。ホルベア変奏は...少し聴いたのですがあまり興味が湧かずパスしてしまいました(^^;。

録音ですが,弦楽合奏もピアノもまずまずの録音で,残響は適度であり録り方も自然で悪くないのですが,少し雑味というか濁りがあり,透明感や音の伸びに欠けています。録音機材があまり良くないのかもしれません。惜しいと思います。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
タマーシュ・フェイェシュ Tamás Fejes (Violin)
4-7, November 2014 and 28-31, October 2015
DMV120 (P)2016 Tamás Fejes (C)2016 Discovery Music & Vision (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jp

CD試聴記」からの転載記事です。

モダン楽器での演奏。オーソドックスで,丁寧に演奏しています。 技術的にも安定感があり,音色も綺麗です。 特徴のある演奏ではありませんが,耳に馴染みやすく安心して聴くことが出来ます。

録音ですが,少し残響が多めで楽器音に被り,まとわりつきが少々鬱陶しく感じられます。 また音色も影響を受けて癖がついており,明瞭感も落ちています。 そんなに悪くはないとはいえ,もう少しすっきりとヌケ良く明瞭に録って欲しいところです。 ちょっともったいないと思います。

タマーシュ・フェイェシュはハンガリー出身のヴァイオリニストで, フィルハーモニア管弦楽団に所属していたことがあり, 最近はロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団のアシスタント・リーダー,および, 英国王立スコットランド音楽院の非常勤講師とのことです。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
浦川宜也 Takaya Urakawa (Violin)
2015/12/16, 2016/1/30, 2/26, 3/28, 4/14-15
HMOC 17836/8 (P)(C)2016 HIBIKI MUSIC (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

浦川氏34年ぶり2回目の録音で,75歳くらいの録音になります。 年齢からくる技術の衰えはいかんともし難く,相当キレはなくなり音程を含めて不安定です。 しかし,年齢の積み重ねから来る得も言われぬ味わいがあるのも確か。

録音ですが,少し残響が取り入れられていて音色に影響を与えているものの, 楽器の質感もそれなりに感じられて,まずまず良好です。 ソロヴァイオリンの録音として標準的で悪くありません。 もちろん個人的にはもっと残響を抑えてすっきりした音で録って欲しいと思っています。

でもやはりこれは浦川氏とご縁がある方に向けたアイテムなのでしょうね。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
浦川宜也 Takaya Urakawa (Violin)
1979年-1982年
FOCD 2505/6 FONTEC RECORDS (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jp

CD試聴記」からの転載記事です。

旧世代の古めかしい演奏スタイルを頑なに守り続ける職人気質の頑固オヤジ的演奏(^^;。 遅めのテンポで一音一音力を込め,ヴィブラートをしっかりかけて弾いています。 弓の圧力が強くひたすらハイテンションで音が少々ギスギスしています。 技術的なキレが良いとは言えませんが,地に足の付いた音楽を聴かせてくれます。 渾身のシャコンヌは一聴の価値ありです。 リピートの省略があるのが少々残念です。

録音ですが,比較的オンマイクで残響を抑え気味にしていますが,響きの質があまり良くなく楽器音が少し濁っています。 惜しいと思います。 ソナタ第3番,パルティータ第3番は少し良い状態です。

浦川氏1回目の録音で,40歳頃の録音と思われます。 15年ほど前に1回目のレビューを載せていましたが,久しぶりに聴いてみてだいぶ印象が異なりました。 再レビューです。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
イ・ソンイル Sungil Lee (Violin)
録音データ記載なし
WMED 0520(P)(C)2016 Arcade 9 (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jp

CD試聴記」からの転載記事です。

モダン楽器の伝統的なスタイルによるオーソドックスな演奏。 技術的にものすごくキレるわけではありませんが,安定感はあって安心して聴けます。 特徴のある演奏ではありませんが,真摯に音楽に向き合う姿勢が伝わってくる良い演奏だと思います。

録音ですが,やや残響が多めで楽器音へのまとわりつきが少し気になりますが, その影響は少なめで許容範囲です。 ソロ・ヴァイオリンの録音としては標準的だと思います。 もちろん私としては残響をもっと抑えてすっきりと伸びのある音で録って欲しかったとは思います。
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バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
中木健二 Kenji Nakagi (Cello)
2016年7月24-26日 キング関口台スタジオ 第1スタジオ
KICC 1345/6 (P)(C)2016 King Record Co. Ltd. (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

モダン・チェロによる演奏。 明るく軽やかであり,どこまでも爽やかな印象を残す好演奏。 技術的にも万全であり,この余裕がこの楽しい演奏を生み出しているのでしょう。 モダン楽器を活かした新しい時代を拓く演奏だと思います。

録音ですが,スタジオで録音したとは思えない残響感が中途半端です。 残響がまとわりついて明らかに明瞭感と質感を阻害しモゴモゴしています。 音楽を豊かに演出する効果はゼロ,音色を濁し不明瞭にする悪影響しか感じません。 明らかにこの素晴らしい演奏に水を差しています。 いったい何のためにスタジオで録音したのか理解に苦しみます。 もし人工的に残響を付加していたとしたら,本当に余計なことをしてくれたもんだと苦情を言いたいです。 演奏が良いだけに辛めの評価とさせていただきました。 本当にこの録音は残念です。

解説書によると,中木氏は,東京藝術大学を経て,2003年からパリ国立高等音楽院で錬磨を重ね, スイス・ベルン芸術大学でさらに研鑽を積み,2010年にはフランス国立ボルドー・アキテーヌ管弦楽団の首席奏者となられ, 2014年に帰国,東京藝術大学音楽学部准教授に着任された,とのことです。

また〈モダン楽器でバッハを弾くこと〉について,「バロック・チェロは弾きません」 「ちゃんと演ろうとしたらモダン楽器を一時辞めないといけませんし,中途半端なバロックは嫌い。 ロマンティックな解釈で演奏はしませんが,ガット弦でピッチを変えて弾く演奏とは一線を引いておきたい。」 と語られたそうです。
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バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
チョン・キョンファ Kyung-Wha Chung (Violin)
19-21.II, 24-26.III, 3-5.IV & 30.V-1.VI.2016, St George's Brisol
0190295944162 (P)(C)2016 Parlophone Records (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

人間的な魅力に溢れる快演! 力を抜くことで音楽的な表現の幅が格段に広がっています。 陰影に富み情緒豊かであり,彼女自身の言葉でバッハに対する思いが語りかけられているようで大変魅力的です。 かつてのあらん限りの情熱を注ぎ込んだ演奏とは目指す方向性が明らかに変わった,まさに新境地の演奏と言えると思います。

録音ですが,やや残響が多めであり,その影響で少し音色がくすみ,まとわりつきですっきりしません。 旧EMI的音づくりが少々不満ですが,それでも楽器の音はしっかりと捉えられている方なので,許容範囲ではあります。

満を持しての全集録音が素晴らしい出来でホッとする気持ちがある一方で, やはり全盛の時期に全曲録音がされなかったことを残念に思う気持ちが余計に強くなります。 ファンとしては満を持すことなくその時々の姿を残していってくれたらそれが一番うれしいと思うのです。
私にとって理想的な録音を多く提供してくれるNPR Music Tiny Desk Concertでバリー・ダグラスの演奏がアップされていたので紹介します。演奏曲目は下記の通りです。

"The Coolin (arr. Douglas)"
"Planxty Dillon (arr. Douglas)'"
"The Raggle Taggle Gypsy (arr. Douglas)"
"My Lagan Love (arr. Douglas)"



アップライトピアノの音を極めて明瞭に,クリアに聴かせてくれます。ちょっとマイクポイントが近いかなとも思いますが,それでも私にとってはかなり理想的なピアノ録音です。
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バッハ:ゴルトベルク変奏曲BWV988
アンジェラ・ヒューイット Angela Hewitt (Piano)
Henry Wood Hall, London, on 28 August - 1 September 1999
CDA67305 (P)2000 Hyperion Records (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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バッハ:ゴルトベルク変奏曲BWV988
アンジェラ・ヒューイット Angela Hewitt (Piano)
2015年12月14日~17日 キリスト教会(オーバシェーネヴァイデ,ベルリン)
CDA68146 (P)2016 Hyperion Records (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

アンジェラ・ヒューイットのゴルトベルク変奏曲の1999年の録音は名盤としての地位を獲得していると思いますが,それから16年,同じハイペリオン・レーベルでの再録音盤が発売されました。

彼女の演奏は,全体として控え目で落ち着いた上品さが美点だと思っています。そしてピアノという楽器の特徴を活かした細やかで豊かな表情。各声部がそれぞれ別の表情を持ちながら絡み合っていくところが素晴らしく思いました。旧録音と新録音は,演奏の基本的な解釈や表現のスタイルは大きく変わっていないと思います。ちょっと聴くと,あれっ?すごく似ているなと。しかし,まるで個々の指が個別の意志を持っているかのごとく,一つ一つの音の弾き分けがより細やかにコントロールされ,より深みのある音楽へと進化しているように感じられました。16年の積み重ねがこういったところに顕れているのでしょう。

さて録音ですが,旧録音の方は残響の被りですこしモヤッとした不明瞭さが気になるものの,それでも比較的すっきりとした音響でまとめられていると思います。対して新録音の方は,ピアノの音をより豊潤に,濃い音で捉えています。残響も多めに入っているために音色が少しぼってりとしつこい感じがします。いずれも一長一短であり,もっとすっきりとクリアに透明感のあるヌケの良い音色で録って欲しいものです。せっかくの素晴らしい演奏が,この録音では最大限には活きてこないと思います。惜しいです。

最後にリピートですが,新録音も旧録音も最後のAria da capo以外は実行されていて,この点でも全く問題ありません。新録音は収録時間が82分を越えていますね。最近は82分越えも当たり前になってきたように思います。私の環境では再生に全く問題はありませんでした。

演奏時間 約79分(1999年録音) 82分14秒(2015年録音)
リピート表
Aria ○○
Var.01 ○○ Var.02 ○○ Var.03 ○○
Var.04 ○○ Var.05 ○○ Var.06 ○○
Var.07 ○○ Var.08 ○○ Var.09 ○○
Var.10 ○○ Var.11 ○○ Var.12 ○○
Var.13 ○○ Var.14 ○○ Var.15 ○○
Var.16 ○○ Var.17 ○○ Var.18 ○○
Var.19 ○○ Var.20 ○○ Var.21 ○○
Var.22 ○○ Var.23 ○○ Var.24 ○○
Var.25 ○○ Var.26 ○○ Var.27 ○○
Var.28 ○○ Var.29 ○○ Var.30 ○○
Aria da capo ××
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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集
ルドルフ・ブッフビンダー Rudolf Buchbinder (Piano)
2010年9月19日~2011年3月27日 ドレスデン,ゼンパーオパー
88697875102 (P)(C)2011 Sony Music Entertainment Austria (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

私はピアノ曲は特定の曲を除いてほとんど聴いてきませんでした。ベートーヴェンのピアノ・ソナタもほとんど聴いてこなかった曲に入ります。特に理由はないのですが,ここらでちょっと聴いてみようかと思い(^^;,Apple Musicで新しめの録音で,演奏も録音も良さそうな全集を物色して選んだのがこの全集です。最近のApple Musicは曲名で検索しても対象が全ては出てこず,限られた中での選択でしたので,特に録音に関して満足が得られるものを選べたかというと必ずしもそうではないのが少々残念なところではあるのですが。まあ価格も安い部類に入るので良しとしました。

この全集は,およそ半年にわたって7回に分けて行われた全曲演奏会のライヴ録音とのことです。まだ全てを聴けてはいないのですが,テクニックのキレが素晴らしく,また比較的速いテンポで甘さを廃した淀みのない音楽が私の好みには合いそうでした。

そして肝心の録音なのですが,少し癖のあるホールの響きが付帯音としてまとわりつき音色に影響を与えてはいるものの,その影響は少なめで,芯のあるピアノの音色が良く伝わってきます。正直言うともう少し近めでクリアで透明感ある音で録って欲しかったところですが,まあストレスなく聴けるので許容範囲に入るかなとは思います。少し甘い評価ですが四つ星半です。7回に渡る演奏会のライヴということですが,統一感は確保されています。

探せばもっと気に入るものはあるだろうとは思いつつ,まずは曲をよく知るところからということで,この全集をしっかりと聴いてみようと思います。
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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」,第14番「月光」,第23番「熱情」
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
1966年(第8番),1967年(第14番,第23番) ニューヨーク,30丁目スタジオ
SICC 10199 (P)(C)2014 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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ブラームス:間奏曲集
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
1959年, 1960年 ニューヨーク,30丁目スタジオ
SICC 10204 (P)(C)2014 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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ワーグナー:グレン・グールド編によるピアノ・トランスクリプションズ
ワーグナー:ジークフリート牧歌(オリジナル編成による演奏)(*)
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
グレン・グールド指揮/トロント交響楽団員(*)
1973年 トロント・イートン・オーディトリアム,1982年 トロント,セントローレンス・ホール(*)
SICC 10205 (P)1990 (C)2014 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

先日紹介したモーツアルト:ピアノ・ソナタ全集バッハ録音と同じシリーズです。バッハは2012年の発売でしたが,こちらはモーツァルトと同じ2014年の発売でした。

ブラームスが1959年から1960年,ベートーヴェンが1966年から1967年,ワーグナー編曲が1973年の録音と,上記3枚の録音時期は離れていますが,今までの紹介でも触れてきたように,録音のポリシーは一貫しており,全てスタジオでの録音,残響は全くなくピアノの音色を極めて明瞭に捉えた私にとって最高のピアノ録音です。さすがにブラームスはクオリティ面で若干落ちますが,ほとんど気になりませんし,ワーグナー編曲の録音はもう全くクオリティ面で問題ありません。

グールドは一部のバッハ録音以外はあまり聴いてこなかったので,じっくりと楽しませてもらおうと思います。
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テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア
ファビオ・ビオンディ Fabio Biondi (Violin)
2015年6月18-20日 サンテウヴァミーア教会(ニゴリネ・ディ・コルテ・フランカ,イタリア)
Glossa GCD 923406 (P)(C)2016 note 1 music gmbh (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

CD試聴記」からの転載記事です。

バロック楽器による演奏。 かなり自由に装飾や編曲を入れた演奏です。 大胆に変化に富んだ表現を即興的に次々に繰り出してくるところが聴きものです。 技術的にも大変上手く,音色も綺麗だと思います。 ただし,録音の影響でそれが満足に楽しめないのが残念なところです。

録音ですが,残響が多く残響時間も長く,楽器音への被りがかなりあって音色は大きく影響を受け, 明瞭感に乏しく,細部も聴き取りにくく,ヌケも良くありません。 ただ,オーディオ的なクオリティは良く,音は滑らかであり, 残響が許せる方であれば優秀録音なのかもしれません。 ただやはりこれは好録音ではありません。
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バッハ:インヴェンションとシンフォニア(全曲)
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
1964年3月18,19日 ニューヨーク,30丁目スタジオ
SICC 10168 (P)1964 (C)2012 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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バッハ:平均律クラヴィーア曲集(全曲)
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
[第1巻]1962, 63, 65年,[第2巻]1966, 67, 69年 ニューヨーク,30丁目スタジオ/1971年 トロント,イートン・オーディトリアム
SICC 10162-5 (P)1972 (C)2012 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★☆~★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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バッハ:パルティータ(全曲)
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
1957年(第5番,第6番),1959年(第1番,第2番),1962年(第3番),1962, 63年(第4番) ニューヨーク,30丁目スタジオ
SICC 10166-7 (P)1969 (C)2012 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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バッハ:イギリス組曲(全曲)
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
1971年(第2番),1973年(第1番),1974年(第3番),1974, 76年(第4番,第5番),1975,76年(第6番) トロント,イートン・オーディトリアム
SICC 10169-70 (P)1977 (C)2012 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

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バッハ:フランス組曲(全曲),フランス風序曲
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
1971年(第6番),1972年(第1番,第2番),1972, 73年(第3番),1973年(第4番),1971, 73年(第5番,フランス風序曲) トロント,イートン・オーディトリアム
SICC 10171-2 (P)1982 (C)2012 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

先に紹介したモーツァルトのピアノ・ソナタ全集と同じ企画盤です。これが発売された2012年は,グレン・グールド生誕80年,没後30年ということでの日本独自の企画盤とのことです。SACDであることに加え,音匠仕様レーベル・コートが採用されています。

これらのバッハの録音は,1957年から1976年という長期にわたって録音をされています。録音機材の進歩に従って音質は徐々に向上しているのはもちろんですが,録音のポリシーは当初からほぼ一貫しているので,聴いた印象がぶれません。1960年代前半までの録音は,さすがに古くて歪み感が気になるものもありますが,1960年代後半以降の録音はクオリティ面でもほぼ不満がありません。

何度も申し上げているとおり,グールドの録音はスタジオで全く残響のない環境でピアノの音色をストレートに克明に質感高く録った超好録音と言えるものです。これらの一貫した録音はグールドが録音に拘り直接コントロールしていたからこそ実現したんですよね。素晴らしい演奏が最高の状態で残されたことに本当に感謝したいと思います。

なぜこのような録り方をする人が出てこないのかほんと不思議でなりません。
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グレン・グールド/バッハ:ゴルトベルク変奏曲(1955年)の再創造
- ZENPH RE-PERFORMANCE

September 25-26, 2006 at Glenn Gould Studio, Tronto, Ontario, Canada
SICC 10043 (P)(C)2007 SONY BMG MUSIC ENTERTAINMENT (国内盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

グレン・グールドの有名なデビュー盤,1955年のバッハ:ゴルトベルク変奏曲の演奏を自動演奏で再現したもの。ちょっと古いディスクですが,久しぶりにグールドのディスクを引っ張り出してきた中にあったので,この機会に取り上げたいと思います。

「ゼンフによる“再演”とは?」ということで,次のように説明が書かれています。

グレン・グールド・スタジオに腰を下ろし,グールドが1955年に録音した「ゴールドベルク変奏曲」の名演を目の前で聴いている自分を想像してみよう。ゼンフの“再演(Re-Performance)”による本作は,そのような状態をサラウンド・サウンド,ステレオ,またはヘッドホンで体験できるよう工夫を特別に凝らした新録音である。

ゼンフZENPHは録音時の音を精緻に再現することにより,録音物を生演奏へと還元する。ソフトウェア・ベースのこのプロセスは,一つ一つの音符に関し,音量,アーティキュレーション,ペダルの動きなど,演奏時の詳細を抽出し記号化する。その記号化された音を高性能のコンピューターやハードウェアを搭載したアコースティックなグランド・ピアノで再生すると,もとの録音が行われた部屋で聴いているかのような音を体験することができる。この“再演”は最新鋭の録音技術により,当時の様子を改めて録音したものである。その結果,20世紀を象徴する録音を音響的に再発見することができるのだ。

使用されたピアノは,ヤマハのDisklavier Proというグランド・ピアノで,家庭用Disklavierの10倍の精度で再生することが出来るとのことです。ソフトの開発は米の音楽系テクノロジー企業,ゼンフ・スタジオで,ピアノ演奏の録音を解析することによって得られる音楽的属性(音程,音符の長さ,打鍵や離鍵の速度など)を周りの雑音と分離し,その属性をデジタル処理でエンコーディングしたということです。

そしてこのディスクはSACDハイブリッドで,SACD層にはステレオと5.1chマルチ,CD層にはステレオとバイノーラル録音が連続して収録されています。録音にも拘りがみられますね。

それで演奏なのですが,これ本当に自動演奏?というほどオリジナルの演奏をよくトレースしていると思います。何も知らせられずに聴いたら自動演奏とは思わないのではないでしょうか。しかし,グールド自身が残した録音と比較して聴いてみると,やっぱりどこか生気に乏しいというか生き生きとしていないというか,自動演奏の限界も感じてしまいます。多分に先入観もあるとは思いますが,人間特有のゆらぎが表現しきれていないのではないかという気がします。また,やっぱり機械であらかじめ決められたタッチでしか再現できないというのもあるのかもしれません。試みは面白いと思いますし,今後の技術の進化とプログラマの創造力で,“再演”ではなく,グールドを超える架空のピアニストをデビューさせたりといったことが可能になるかもしれないですしね。

さて肝心の録音なのですが,スタジオで録音されているにもかかわらず,なぜか音の濁り・曇りがひどくて全く冴えない音色なのです。スタジオでどうやったらこんな録音になるのか不思議です。グールドが残した数々の録音の方がよっぽど鮮明で音に輝きがあります。グールドが聴いたらきっと許さないに違いない,と思ってしまいます。この企画は録音でこれを提供するというなら録音が命のはずなのに。残念でなりません。
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モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集
グレン・グールド Glenn Gould (Piano)
1965-1974年 ニューヨーク,30丁目スタジオおよびトロント,イートン・オーディトリアム
SICC 10200-3 (P)(C)2014 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

いまさら感が強いのですが...(^^;,グールドは演奏も録音も基本的には好きなので,聴きたい曲については出来るだけ良い状態のものを手に入れておきたいということで,日本独自企画のSACD(Hybrid)をいくつか入手していました。レビューし損ねていたので,この機会に触れておきたいと思います。

解説書によると,グールドは最初期の録音(つまり有名なゴルトベルク変奏曲1955年)から録音に深く関わり,常に最新の録音技術(テクノロジー)を取り入れながら一貫性のある録音をしてきたようです。実際に,1957年あたりの録音からすでに録音のポリシーが確立しており,録音機材の進歩によってクオリティは徐々に向上しているものの,録り方は一貫していて年代による変化はほとんど見られません。グールドの数々の素敵な録音は,グールド自身が築き上げてきたものだったのですね。

このモーツァルトの全集録音は,1965年から1974年という時間をかけて完結されたものですが,1965年にはすでに一定水準以上のクオリティでの録音が可能となっていたためか,全体を聴き通しても録音のクオリティで気になるところはほとんどありません。

全てスタジオでの録音であり,残響は全くなく,音色も極めてクリアで自然であり,帯域感も必要十分,ピアノの粒立ちが素晴らしく,鑑賞を邪魔する要素が全くない,私にとっては完璧なピアノ録音です。

こんな素晴らしいピアノ録音なのに,追随してこのような録り方する人が全くゼロというのは残念でなりません。
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ショパン:12の練習曲作品10・作品25
マウリツィオ・ポリーニ Maurizio Pollini (Piano)
1972年1月,5月 ミュンヘン
UCCG-51087 (P)1972 Deutsche Grammophon (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

言わずとしれた名盤中の名盤。すでにこのブログでも取り上げていました(→こちら)。このディスクが私にとって特別な存在であることは繰り返し述べてきた通りです。今所有しているディスクがだいぶ古く,少し前から最新のマスタリングのものに買い換えたいと思っていたのですが,買いそびれていました。

たまたま昨日立ち寄ったタワーレコードで,発売日当日のこのディスクを見つけ,これは何かの縁と思って購入しました。DSDマスターということなので,私が持っているものより新しいマスタリングであることは間違いありません。

よく見てみると,SHM-CDというのはまあいいとして,HR(High Resolution)カッティングという聞き慣れない原盤の作り方?をしているようで,DSDマスターから一旦176.4kHz/24bitのマスターを作り,そこからダイレクトに?原盤を作っているようです。どういうことかさっぱり理解できませんが(^^;。

肝心の音質ですが,旧ディスクに比べると,わずかに鮮明さが増し,うっすらとかかっていたベールが取り払われたような音質の向上が感じられました。とはいってもそれはわずかであり,もっと劇的な改善を期待していたのですが,そこまでではなかったです。過剰に期待しすぎました(^^;。とはいえ,音質改善はあったので買い換えて良かったと思います。

なお,前回レビューでは好録音度は三つ星半としていましたが,少し辛すぎたと思い,今回四つ星にしています。やや音質が硬く癖のある音質なのですが,邪魔になる残響等はわずかであり,それほど悪くはないなと再評価しました。

ちなみに,これはユニバーサルミュージックのドイツ・グラモフォン ベスト100 Premiunの中の一枚で,クライバーのベートーヴェン第5番・第7番ムラヴィンスキーのチャイコフスキー第5番フリッチャイのチャイコフスキー第6番なども聴いてみようと今手配しているところです。名盤揃いなので,もっと手を出してしまいそうです(^^;。入手したらまたレポートしたいと思います。
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バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
マハン・エスファハニ Mahan Esfahani (Cembalo)
録音 2016年4月, 5月
479 5929 (P)(C)2016 Deutsche Grammophon (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

エスファハニ氏は1984年生まれということですので,現在32歳,まだまだ若いチェンバロ奏者ですね。この演奏,装飾やリズムの崩し方に色々と斬新な仕掛けがありなかなか面白いと思います。演奏者の様々な創意工夫とチャレンジ精神を楽しめる演奏です。繰り返し聴きたくなる演奏かどうかはちょっと微妙かと思いますが...

そして録音ですが,わずかに録音会場の響きが気になるものの,楽器そのものの豊潤な響きを濃厚に質感豊かに捉えたHi-Fi調の好録音ですね。ちょっと濃すぎてもう少しすっきりと録って欲しいと思うところもありますが,これはこれで良いと思います。

最後にリピートですが,全て実行されていました。完璧です。

演奏時間 約79分
リピート表
Aria ○○
Var.01 ○○ Var.02 ○○ Var.03 ○○
Var.04 ○○ Var.05 ○○ Var.06 ○○
Var.07 ○○ Var.08 ○○ Var.09 ○○
Var.10 ○○ Var.11 ○○ Var.12 ○○
Var.13 ○○ Var.14 ○○ Var.15 ○○
Var.16 ○○ Var.17 ○○ Var.18 ○○
Var.19 ○○ Var.20 ○○ Var.21 ○○
Var.22 ○○ Var.23 ○○ Var.24 ○○
Var.25 ○○ Var.26 ○○ Var.27 ○○
Var.28 ○○ Var.29 ○○ Var.30 ○○
Aria da capo ○○
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バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
アレクシス・ワイセンベルク Alexis Weissenberg (Piano)
1981年6月1-4日 パリ,サル・ワグラム
6387222 (P)1982 EMI Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecoredsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

いつも参考にさせていただいているFeFeFe's Barで紹介されていたディスク。全くノーマークでした。強靱なタッチ,正確無比で抜群のキレを誇るテクニック,そしてこの自由奔放さ! 颯爽としたテンポで駆け抜けていく爽快さ! これは強烈な演奏者の個性を楽しむディスクだと思います。グールドの2回目と同じ年に録音されたという同氏2回目の録音,面白いですね! バッハらしくないかもしれませんが,これはアリでしょう。今の時代,このような演奏はなかなか聴けないんじゃないでしょうか。

そして録音ですが,残響感はそれほどなく,楽器音を中心に明瞭に捉えているのはすごく良いのですが... 音色に少し癖がのり,そして硬いです。このあたりはさすがEMI録音,というところでしょうか。基本的に悪くないと思うのですが,この硬質な音色ちょっと残念なところです。

最後にリピートについてですが,完璧にすべて行っていますね。文句なしです。

演奏時間 約78分
リピート表
Aria ○○
Var.01 ○○ Var.02 ○○ Var.03 ○○
Var.04 ○○ Var.05 ○○ Var.06 ○○
Var.07 ○○ Var.08 ○○ Var.09 ○○
Var.10 ○○ Var.11 ○○ Var.12 ○○
Var.13 ○○ Var.14 ○○ Var.15 ○○
Var.16 ○○ Var.17 ○○ Var.18 ○○
Var.19 ○○ Var.20 ○○ Var.21 ○○
Var.22 ○○ Var.23 ○○ Var.24 ○○
Var.25 ○○ Var.26 ○○ Var.27 ○○
Var.28 ○○ Var.29 ○○ Var.30 ○○
Aria da capo ○○
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ショパン:練習曲全集
小菅 優 Yu Kosuge (Piano)
August 1999 at Stadthalle Braunschweig
SICC 754 (P)1999 (C)2007 Sony Music Entertainment (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

小菅さん16歳の時の録音で,「小菅優の才能を認めた指揮者が自身のレーベルramに録音させたもの」であり,「ヨーロッパの権威ある最大の音楽専門誌フォノフォルムで5つ星をもらった記念碑的アルバム」とのことです。2007年にSony Musicから発売されました。作品10,作品25に加え,“3つの新しい練習曲”を含む練習曲全集です。

ショパンの練習曲集というと,私がクラシック音楽の世界に足を踏み入れるきっかけとなったポリーニの名盤で耳が出来上がってしまっていて,他の演奏者の演奏がなかなか受け付けられないのですが,この小菅さんの演奏は,そんな私にもすんなりと聴くことの出来る演奏でした。裏を返すと,あくまで個人的な印象ですが,ポリーニの演奏にかなり近いと思います。細部までコントロールが行き届き,まったく淀みなく,力強く突き進んでいく音楽が爽快です。16歳にしてこの完成度の高さ,素晴らしいです。今の小菅さんならもっと違う表現をされるのではないかと思いますが,16歳の小菅さんの無垢でストレートな演奏が残されたことをうれしく思います。

さて録音ですが,演出感の少ない素直な録音なので基本的には印象は悪くないのですが,わずかな残響というか響きによって音色がモワッと曇ってスカッとしておらず(こんな言い方ですみません(^^;),質感やニュアンスが感じ取りにくくなっているのは残念です。ピアノの録音としては標準的で悪くないとは思いますが,惜しいと思います。
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ハイドン:ピアノ・ソナタ集
エイナフ・ヤルデン Einav Yarden (Piano)
2015年12月3-5日 オランダ,スキーダム,ウエストフェスト教会
CC72742 (P)2016 Challenge Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

いつも参考にさせていただいているハイドン音盤倉庫で紹介されていたディスク(有り難うございます!)。録音が良いとのコメントに釣られて聴いてみました。演奏についてはハイドン音盤倉庫をご参考にしていただければと思います。収録曲は下記の通りです。

ピアノ・ソナタ第44番 ヘ長調 Hob.XVI:29
ピアノ・ソナタ第39番 ニ長調 Hob.XVI:24
ピアノ・ソナタ第40番 変ホ長調 Hob.XVI:25
ピアノ・ソナタ第41番 イ長調 Hob.XVI:26
ピアノ・ソナタ第46番 ホ長調 Hob.XVI:31
ピアノ・ソナタ第47番 ロ短調 Hob.XVI:32

ということで,今回は録音についてのコメントです。ピアノの楽器自体の響きを適切な距離感で明瞭に捉えた好録音です。残響感はほとんどなく,録音会場の響きが少しのっていて音色にわずかな色を付けていますが,気になるほどではありません。個人的にはもう一歩寄って録音会場の響きの比率を抑え,明瞭感と質感をもう少し強くして欲しかったとは思いますが。一般的にはこれくらいが受け入れられやすいのではないかと思います。

ということで,ピアノの美しい響きを楽しませてもらおうと思います。

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