好録音探求

 『演奏者の存在を身近に感じられる録音』を求めて・・・
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オーディオトランスデューサ工学
マイクロホン,スピーカ,イヤホンの基本と現代技術
日本音響学会編 音響テクノロジーシリーズ17
大賀寿郎(著)
コロナ社 2013年3月 ISBN978-4-339-01118-0
参考: Amazon.co.jpHMV Onlineiconコロナ社

【目次】
1. オーディオトランスデューサの基礎知識
2. 種々のオーディオトランスデューサ
3. トランスデューサの機械音響振動系と回路
4. 電気音響変換器の理論と定量化
5. 感度と周波数特性
6. トランスデューサの音場と音響放射
7. 音波の伝送
8. 音波の反射と回折
9. 多点送受音と指向性の制御
10. オーディオトランスデューサの設計技術
11. オーディオトランスデューサの測定
12. オーディオトランスデューサを用いる音響システム

本書は,マイクロホン,スピーカ,イヤホンといったオーディオトランスデューサ(電気音響変換器)に関する基本的な技術および音響工学の基礎を体系的に広く浅く学べる入門書です。エンジニアがこれらの技術的な内容を理解する取っかかりとしてなかなか上手くまとめられていると思います。理系でない方には少々専門的すぎるとは思いますし,書かれている数式まではなかなか理解できるものではありませんが,概念を把握したり基本原理をざっと理解するには良い書籍だと思いました。このあたりは枯れたローテクのアナログ技術ですが,奥深さを感じますね。

著者の大賀寿郎氏は,大学卒業後は日本電信電話公社や富士通の研究所に在籍された後,現在は,芝浦工業大学名誉教授,東京電機大学講師,日本音響学会代議員,電子情報通信学会フェロー,IEEE(米国電気電子学会) Fellowとのことで,この分野の権威ですね。

コロナ社の音響テクノロジーシリーズは興味をそそられる書籍が多くあります。以前紹介した超広帯域オーディオの計測もシリーズは違いますがコロナ社でした。機会があればまた読んでみたいと思います。

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デジタル・オーディオの基本と応用
河合 一(著)
誠文堂新光社 2011年12月25日発行 ISBN978-4-416-11113-0
参考: Amazon.co.jp

副題として「アマチュアからプロまで,21世紀のデジタル・オーディオ技術を網羅」と記載されています。著者はオーディオ機器メーカーの山水電気から外資系半導体メーカーのバー・ブラウン,テキサスインスツルメンツに転職し,技術サポートを行ってきたエンジニア,ということで,本書も技術者視点の実践的な内容です。以前紹介した「超広帯域オーディオの計測」がどちらかといえば学術的であったのとは対照的ですが,主要デバイスのデータシートの最初のページを引用して実例を示したりと,デバイス視点での記述が中心になっていて,エンジニアには読みやすいのではないかと思います。

タイトルの通り,デジタル・オーディオの基本となる各種特性について解説されているほか,本書でもジッターについて一つの章が割かれ,約50ページにわたって特性や対策などについて記載されています。

まだ斜め読みレベルなのでこれからじっくりと読みたいと思いますが,ん?と思う記述がないことはないですが(^^;,デジタル・オーディオの様々な技術が比較的わかりやすく実践的に記載されているので参考になりそうです。理系でない方には少々取っつきにくく難しいかもしれませんが,風説や思い込みや誤解がまかり通っているオーディオで,こういったことに流されず正しく見極めて判断していくために知っていて損はない最低限の知識が書かれていると思います。

ただ一方で,示されているデータなどが実際に聴感上どれくらいのものなのかを体験しなければ結局何もわからない,「オーディオは実際に聴いてなんぼ」という面もあるので,難しいところです。

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超広帯域オーディオの計測
蘆原郁(編著),大久保洋幸,小野一穂,桐生昭吾,西村明(共著)
コロナ社 2011年8月 ISBN978-4-399-00824-1
参考: Amazon.co.jp

本書で言う「超広帯域オーディオ」とは,一般的なオーディオCDと比較して周波数帯域,ダイナミックレンジが広いデジタルオーディオのことを指す,としています。そして本書の目的は,「高品位オーディオが置かれている現状,課題を整理し,新しい時代のオーディオ技術を切り開くための基礎知識を共有しようというものである」とまえがきに書かれています。

「計測」と書かれていますが,計測や実験,評価を切り口に俗に言うハイレゾオーディオを含めたオーディオ技術に関する概論書となっており,まえがきに書かれている通り,現在のオーディオ技術を俯瞰するのに役に立つであろうと思われます。専門書なので数式なども出てきますが,それを読み飛ばしてもそれなりに知識が得られるように書かれていますが,本書の性格上,あまり深くまで突っ込んだ記述はないですし,いわゆる迷信的なことに対して断定的な言い方は避けられていますので,少し物足りないところはありますが,これはまあ仕方ないと思います。

本書の構成は次のようになっています。

1.超広帯域オーディオまでの道のり
オーディオの技術面からみた歴史について書かれています。

2.サンプリングと量子化
デジタルオーディオの基礎知識となる内容が書かれています。

3.ハイサンプリングのメリットとデメリット
メリットとしては,波形忠実度の向上,量子化雑音レベルの低減,デメリットとしては,非線形ひずみの増大,タイムジッタの影響などが挙げられています。SACDの量子化雑音についてもデメリットの項として述べられています。

4.ハイビットとダイナミックレンジ
ダイナミックレンジの求め方,ハイビット化で何が期待できるのか,などが書かれています。

5.超広帯域のマイクロホン技術
超広帯域マイクロホンを開発するための技術について書かれています。

6.室内音響と超広帯域オーディオ
残響時間や室内音響の周波数特性,騒音,再生環境などについて書かれています。

7.オーディオ信号の劣化およびその計測
オーディオ機器を評価する指標の説明と,これを超広帯域オーディオに適用する場合の課題について書かれています。

8.タイムジッタ
なんとジッタに1章まるまる割いています。しかもかなりのページ数を使っています。インターフェースジッタとサンプリングジッタの説明,また,理論上のジッタ許容量,および音楽信号聴取時のジッタの主観的な検知限に関する近年の研究が紹介されています。

オーディオ機器で発生しうるジッタは,実験で確認された検知限よりもはるかに小さいレベルのようで,メディアの素材の違いなどで発生する音の差はジッタが影響していると言い切れるほど単純なことではないように思いました。

9.聴覚からみたオーディオ周波数帯域
可聴帯域下限,上限に関する実験結果が紹介されています。22kHz以上の高い音を確実に聴き取るには音圧レベルとして80dB以上が必要であることや,音楽信号などの複合音で高レベルの高周波が含まれている場合は,スピーカの非線形性に起因する可聴域の混変調ひずみ音を聴いて違いを感じている可能性の指摘なども書かれています。

10.主観評価実験を行うには
聴取実験による主観評価も重要であるとし,主観評価を行う上での注意点が書かれています。また,ラボノートに記録を残すことの重要性,認知的バイアス(プラシーボ効果やヒツジ・ヤギ効果(これは初めて知りました),盲検法など),有意差検定の注意点などが書かれています。

深く知るには物足りないと思いますが,デジタルオーディオ技術全般の基礎の入り口としては参考になると思いますので,ご興味のある方は読んでみられても良いかと思います。実はまだ斜め読みしかしていないので,もう少しじっくりと読んでみようと思います。

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