好録音探求

 『演奏者の存在を身近に感じられる録音』を求めて・・・
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
イザベル・ファウスト Isabelle Faust (Violin)
ジョヴァンニ・アントニーニ指揮/イル・ジャルディーノ・アルモニコ
2015年3月21-23日,2016年2月4-8日 ベルリン、テルデックス・スタジオ
HMC 902230.31 (P)2016 harmonia mundi (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

ピリオド的なスタイルの演奏ですが,これは今までに聴いたことがないような新鮮さを感じます。付点や装飾音符の癖のあるリズムの取り方があまり好きではないのですが,それを除けばこの刺激に満ちた演奏は本当に楽しいですね。

さて肝心の録音なのですが,ホールトーンを多めに取り入れ,リアルに録音会場の雰囲気が想起される録音で,そういう方針ということであればかなり上手く録れていると思います。音も滑らかでオーディオ品質も良いと思います。しかし,これは少しホールのキャラクターを前に出し過ぎているように思います。オフマイクで間接音が主体であり,特にソロのボディ感も下支えも弱く,楽器の質感が希薄で表面的にしか捉えられていない気がして私としてはかなりもどかしさを感じます。音場再現を重視する方であれば優秀録音かもしれませんが,残念ながら私の好きな録音ではありませんでした。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
ジェームズ・エーネス James Ehnes (Violin)
モーツァルト・アニヴァーサリー・オーケストラ
2005年8月18-21日 トロント芸術センター,ジョージ・ウェストン・リサイタル・ホール
ONYX 4164 (P)2016 Onyx (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

これは上手い!さすがです。技術的にも文句の付けようがないですし,モダン楽器を活かした伸びのある音色とキレの良いはきはきした発音で音楽が生き生きしています。カデンツァもすべて演奏者自身によるものということで,これも聴きものです。そして演奏者自身が選抜した特別に編成されたオーケストラも良いですね。あえて一言いうとすれば,少しモーツァルトを意識して抑え気味に演奏しているように感じられるので,全開で演奏してくれていたらなぁとは思います。でもこれは良いです。

録音ですが,ソロもオーケストラも豊潤でニュアンス豊かに捉えているのは良いのですが,少し残響が多く演出感が強すぎて,もうちょっと生々しさを残して欲しかったと思います。悪くはないのですが,私の好きな録音とは少し違いました。

この全集,2006年のモーツァルト生誕250周年の年に向けて録音され,2007年の「カナダ版グラミー」と言われるジュノー賞を受賞したそうです。納得です。オリジナル盤は廃盤になったようですが,Onixから復刻リリースされました。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第1番,第3番,第4番
フランク・ペーター・ツィンマーマン Frank Peter Zimmermann (Violin)
ラドスラフ・スルク指揮/バイエルン放送室内管弦楽団
2014年3月6-8日 ミュンヘン,ヘルクレスザール
CD 98.039 (C)2015 hänssler CLASSIC (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第2番,第5番
モーツァルト:協奏交響曲K.364
フランク・ペーター・ツィンマーマン Frank Peter Zimmermann (Violin)
アントワーヌ・タムスティ Antoine Tamestit (Viola)
ラドスラフ・スルク指揮/バイエルン放送室内管弦楽団
2015年6月28日 ミュンヘン,ヘルクレスザール
HC15042 (C)2015 hänssler CLASSIC (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

第1番,第3番,第4番のディスクは以前取り上げていました。第2番,第5番が発売となり,全曲が揃いました。ツィンマーマンは20歳台前半にハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団との競演でEMIに全集録音をしていますが,これはおよそ28年ぶりの全集ということになります。

モダン楽器による演奏で,気品の感じられる,そして透明感ある音色がとても美しい,歌心溢れる表現に胸のすく思いのする素晴らしい演奏です。モダン楽器の良さ,らしさを最大限に発揮しているところが最高に良いです。1回目の全集に比べて硬さが取れ,ずいぶんと柔軟であり,また生命力に溢れています。どちらかというとモーツァルトを楽しむというよりはツィンマーマンの個性的な演奏を楽しむディスクだと思います。

録音も良好です。ソロはわずかに残響のまとわりつきがありますがほとんど気にならないレベルであり,明瞭かつ透明感があり,高域のヌケも良く気持ちよく聴くことが出来ます。バックのオーケストラはもう少し残響感が多めですが,この差がソロを浮かび上がらせる効果を持っています。各楽器の分離も悪くありません。協奏曲の録音として良くまとまっていると思います。バランス的には高域寄りでサウンドとしては少し軽く腰高な感じがしますが,全く問題ありません。

演奏も録音も良い全集です。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
ダヴィド・グリマル David Grimal (Violin)
レ・ディソナンス Les Dissonances
2014年3月1日 パリ,シテ・ド・ラ・ミュジーク
LD006 (P)2015 Les Dissonances (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

Apple Musicでの試聴です。(→気に入りましたので,結局ディスクを購入しました)

先日紹介したブラームスのヴァイオリン協奏曲と同時期に発売されたディスクで,同じく拍手のはいるライヴ録音です。やはり高い技術力を縦横無尽に活かした独特の節回しで,キレが良くスピーディで刺激的な音楽を展開しています。透明感と輝きのある音色もとても魅力的です。ワクワクする演奏ですね。素晴らしいです。オーケストラもこの奔放とも言えるソロにピッタリと驚くほどよく合わせています。

そして,この録音も素晴らしいです。残響は控えめでオーケストラもソロも明瞭で抜けの良さも申し分ありません。オーケストラは見通しが良く,ソロはさらにフォーカスされてオーケストラからくっきり浮き上がっています。弓が弦から離れる瞬間まで些細にニュアンスが伝わってきます。低域はあまり強調されておらずで少し腰高で高域の刺激が強いようにも思いますが,このクリアな音色は本当に魅力的です。ブラームスのヴァイオリン協奏曲の録音とは全く別物です。

演奏も録音も素晴らしい痛快な全集でした。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
藤川真弓 Mayumi Fujikawa (Violin)
ワルター・ヴェラー指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
1979-1980, Kingsway Hall, London, UK
480 5384 (P)(C)1980,1981 Decca Music Group (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazonHMV OnlineiconiTunes Store
第1番から第5番に加え,ロンド2曲とアダージョ,さらに,偽作とされる第6番,第7番まで含む完璧な全集です。この2曲は初めて聴きます。あまり演奏されませんが,偽作というだけで演奏されないのは少しもったいない気のする曲です。それにしてもこの藤川さんの演奏は少し懐かしい薫りがします。このような豊潤で甘美なヴァイオリンの音色は昨今のモーツァルト演奏ではなかなか聴けなくなったように思います。かえって新鮮に響きますね。生真面目なのに軽やかで爽やかなところも好印象です。楽しく聴くことが出来ました。

録音ですが,協奏曲としては普通に良いと思います。オーケストラは少し遠めで残響を伴っていますが,ソロは残響を抑え一段明瞭で浮き上がるように録られています。このようなコントラストが付けられているのは良いのですが,オーケストラは残響による音色の劣化によって若干うるさく聴こえるところが惜しいと思います。ソロももう一歩寄って,あざとくならないぎりぎりのところまで明瞭度と質感を高めて録ってくれていたらなお良かったと思います。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第1番,第5番,協奏交響曲
ヴィルデ・フラング Vilde Frang (Violin)
ジョナサン・コーエン指揮/アルカンジェロ
3-5 April 2014, St Jude-on-the-Hill, Hampstead Garden Suburb, London
0825646276776 (P)(C)2015 Parlophone Records
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

水を得た魚のように生き生きとピチピチとした,そして情緒感溢れる演奏,良いですねぇ,これは。第2弾で全集化されるのが楽しみです(ありますよね?)。協奏交響曲のヴィオラはマキシム・リザノフ(Maxim Rysanov)が弾いていますが,上手すぎて響きがヴィオラらしくないですね(ゴメンナサイ(^^;)。

録音ですが,残響が多く全体に被っていて音がモゴモゴしています。明瞭感も透明感もありません。素晴らしい演奏の魅力を半減させてますね。オーケストラも小編成の良さが捉えられていません。まるでEMIの録音。本当にもったいないです。残念でなりません。第2弾では改善されていると良いのですが...期待薄ですね...
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番
ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第4番
ヒラリー・ハーン Hilary Hahn (Violin)
パーヴォ・ヤルヴィ指揮/ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン
2012年12月(モーツァルト),2013年8月(ヴュータン)
479 3956 (P)2015 Deutsche Grammophon (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

久しぶりに聴くハーンの演奏。モーツァルトをここまで濃厚かつキレよく演奏できるのは彼女しかいないと思える。どんな音楽でも自分の世界に引き込んで素晴らしい音楽に仕上げていく,もう巨匠の領域に踏み込んでいるのではないでしょうか。

ただ,これは全く個人的な好みの話ではありますが,ヴィブラートをかけた音色がどうも肌に合わないのですよね...ちょっと残念。

そして,もっと残念なのがこの録音。残響は確かにあるものの,残響というよりは録音会場の響きというか箱鳴りが楽器音に被っていて,ヴァイオリンの音色を曇らせています。これによって音色ばかりでなくニュアンスや質感が感じ取りにくくなっていて非常にもどかしく感じます。会場の雰囲気は再現されているのかもしれませんが,音楽的に貢献するよりもマイナス点の方が多い,残響や響きの取り入れ方としては失敗している録音だと感じました。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
レイチェル・バートン・パイン Rachel Barton Pine (Violin)
ネヴィル・マリナー指揮/アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
29 August-2 September 2013, Air Lyndhurst Studios, London
AVIE AV2317 (P)(C)2014 RBP Music, LLC (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
モダン楽器ながらヘンデルのヴァイオリン・ソナタ集の快い演奏が印象的で,それを聴いて以来ずっと気になっているヴァイオリニスト,レイチェル・バートン・パインのモーツァルトとなれば,これはもう聴くしかありません(^^;。協奏交響曲K.364も収録されています。

それにしても何とも軽いモーツァルト。天然キャラの素朴さというか微笑ましさというか,なんかそんな感じなのです(上手く説明できなくてすみません...)。テンポが速めの快活な演奏でこの雰囲気を出しているところにこの演奏の面白さがあると思います。一般に広く評価される演奏とは思いませんが,こういうのは好きです。第2番から第5番は自作のカデンツァを弾いていて,これも聴きものです。

録音ですが,ソロは残響感が少なく明瞭で透明感のある音色を美しく捉えています。オーケストラの方は少し多めに残響を取り入れソロとコントラストを付けてソロが浮き上がるように録られています。特に優れた録音というわけではありませんが,協奏曲の録音としては普通に良くまとまった好ましいものです。少々オマケですが四つ星半です。

しかし...ジャケット写真はホラーっぽくて何だかなぁ...(ごめんなさい)。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番,第4番
ヨハンナ・マルツィ Johanna Martzy (Violin)
ハンス・ミュラー=クライ指揮/シュトゥットガルト放送交響楽団
04.10.1956, Vila Berg(No.4), 12.04.1962 Liederhalle Stuttgart(No.3)
94.230 (C)2015 hänssler CLASSIC (輸入盤)
好録音度:★★★☆(No.4), ★★★☆(No.3)
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
マルツィのモーツァルトということで思わず手を出してしまった一枚。初出音源で,どちらもモノラル,第4番はセッション録音,第3番はライヴ録音とのことです。マルツィの演奏は力強く熱く推進力に満ちているのにどこまでも麗しいところが好きで,この演奏でもそれが存分に発揮されています。さすがにモーツァルトということもあって熱さは控えめですが(^^;。

録音ですが,1956年録音の第4番は残響はあまりありませんが少しオフマイク気味で響きの被りが感じられます。古い録音なので高域の伸びがありませんが,年代を考えるとこのくらいかと。残響による音色のくすみではないので比較的聴きやすいと思います。1962年録音の第3番は,録音の傾向は第4番と同じですが,高域の伸びが改善されている分は良いと言えます。残響が少なめで明瞭感がそれなりに保たれているのは救いですが,しかし,1962年にしてはだいぶ古臭い感じがします。まあこれはこれで趣があって良いかもしれません。好録音の観点からはそんなに悪くないです。

決して良好な録音とは言えませんが,貴重な演奏が聴けたことに感謝。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第1番,第3番,第4番
フランク・ペーター・ツィンマーマン (Violin)
ラドスラフ・スルク指揮/バイエルン放送室内管弦楽団
2014年3月6-8日 ミュンヘン,ヘルクレスザール
CD 98.039 (C)2015 hänssler CLASSIC (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
ツィンマーマンは20歳台前半にハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団との競演でEMIに全集録音をしていますが,これはおよそ28年ぶりとなる全集に向けての第1弾とのことです。ヴァイオリン協奏曲の他に,ロンド K.373,アダージョ K.261が収録されています。

モダン楽器による演奏で,気品の感じられる,そして透明感ある音色がとても美しい,歌心溢れる表現に胸のすく思いのする素晴らしい演奏です。モダン楽器の良さ,らしさを最大限に発揮しているところが最高に良いです。1回目の全集に比べて硬さが取れ,ずいぶんと柔軟でかつ躍動感があります。熟した一番おいしい時期という感じがしますね。

録音も良好です。ソロはわずかに残響のまとわりつきがありますがほとんど気にならないレベルであり,明瞭かつ透明感があり,高域のヌケも良く気持ちよく聴くことが出来ます。バックのオーケストラはもう少し残響感が多めですが,この差がソロを浮かび上がらせる効果を持っています。各楽器の分離も悪くありません。協奏曲の録音として良くまとまっていると思います。

演奏も録音も良いディスクでした。全集として完成するであろう第2弾が本当に楽しみです。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番,第4番,第5番
マリアンネ・トゥーシェン Marianne Thorsen (Violin)
トロンハイム・ソロイスツ TRONDHEIMSOLISTENE
2006年5月 ノルウェー,トロンハイム,セルブ教会
2L38SACD (C)2006 Lindberg Lyd AS (輸入盤)
好録音度:★★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicone-onkyo
北欧の高音質レーベル2Lのディスクをもう一つ。このディスクは通常のCDとシングルレイヤーSACDの2枚組です。この他にe-onkyoでハイレゾ音源の配信もされています。先に紹介したチャイコフスキーのディスクでは,非常に高い解像度を持ちながらもやや金属的なうるさい響きがありましたが,この録音ではそれが上手く抑えられており,高い解像度,明瞭度,音色の自然さ,透明感,各楽器の分離,見通しの良さ,ソロとオーケストラのバランス,様々な面で申し分のない出来と言えます。残響もあるのですが,ほとんどマイナスには働いていません。

音のとらえ方においても,オーディオ・クオリティにおいても,今まで聴いた中で最も良い部類に入ります。リファレンス音源候補になりました。

ソリストのマリアンネ・トゥーシェンは,英国のスーパー室内楽団!?(^^;,ナッシュ・アンサンブルのメンバー。このモーツァルトでも溌剌として愉悦に満ちた素晴らしい演奏を聴かせてくれます。

私としては大当たりのディスクでした。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番,第4番,第5番
アラベラ・美歩・シュタインバッハー Arabella Steinbacher (Violin)
ルツェルン祝祭弦楽合奏団 Festival Strings Lucerne
2013年9月 オーバーシュトラース教会(スイス,チューリッヒ)
PCT 5186 479 (P)(C)2014 Pentatone Music (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
奇をてらわないオーソドックスなアプローチながら,瑞々しい輝きに満ちていて,そして子供のような無邪気な喜びさえ感じられるのが素晴らしいと思います。モダン楽器の美しさが発揮されたいままでにない新しさを感じます(「オーソドックス」と矛盾しそうでそうではないところがまた良いのです)。こういうモーツァルトが聴きたかった!

録音ですが,残響は多めに入ってはいますが,ソロは細身ながらくっきりと鮮明であり,残響の影響をあまり受けておらず,美しさと透明感を保っています。バックは響きの影響で少しもやっとしていますが,かえってソロを浮き上がらせることとなり,結果としてあまりマイナスとはなっていません。トータルとしてまずまず良好な好録音と言えます。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
中澤きみ子 Kimiko Nakazawa (Violin)
フィリップ・アントルモン指揮/ウィーン室内管弦楽団
2004/11/3-5,2005/6/23-25 スタジオ・バウムガルテン(ウィーン)
CMCD-20064-65 (C)2006 Camerata Tokyo (国内盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon
中澤きみ子さんの演奏は前から一度聴いてみたいと思っていました。堀米ゆず子さんのモーツァルトの記事を書く中で偶然見つけたのがこの演奏。この薫り立つ瑞々しい輝きのあるヴァイオリンの音色は本当に素晴らしいですね。両端の楽章はテンポが良く颯爽としていますし,中間の楽章のしっとりした歌いっぷりも見事です。個性を主張するのではなく,曲の持つ本質的な美しさを最大限に引き出そうとするような姿勢に好感を持ちます。期待通りでした!

録音ですが,薄っすらと響きが乗っているものの,ソロは透明感がありヌケも良く,ニュアンスもよく感じられて良いと思います。距離感も近すぎず遠すぎず適切です。オーケストラはもう少し響きが多めですが,ソロがくっきりと浮き上がるように対比が取れていてバランスが上手く取れています。私としてはもう少しすっきりと見通しよく録られている方が好みですが,十分許容範囲内です。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
堀米ゆず子 Yuzuko Horigome (Violin)
シャーンドル・ヴェーグ指揮
カメラータ・ザルツブルグ室内管弦楽団

October 18 & 19, 1988, Tsuda Hall, Tokyo (No.3, 4) and July 23, 24 & 25, 1990, Stiftskirche Millstatt, Austria (No.1, 2, 5)
SICC 960-1 (P)(C)1989, 1991 Sony Music Japan (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

ブラームスのヴァイオリン協奏曲が良かった堀米ゆず子さん30歳代前半の録音。持っていることを思い出して棚から引っ張り出してきました。モダン楽器による若々しく溌剌とした元気の良い演奏ですが,やや肩の力が入りすぎているようにも感じられます。少し音程を高めに取っておられるのが私には少し気になります。意図的とは思いますが,もしかしたら気のせいかもしれません。今現在の堀米さんのモーツァルトを聴いてみたくなります。

録音ですが,日本国内で録音された第3番,第4番は,残響の被りが少し多めでもやもやと若干不鮮明です。一方オーストリアで録音された第1番,第2番,第5番は高域が強めで固く刺激的な音質で,どちらかといえば後者の録音の方がくっきりとはしているので良いのですが,もう少し中間的な録音であればなお良かったのに,とは思います。惜しい録音です。(でも言うほどは悪くはないのですけどね...)
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
モーツァルト:交響曲第39番変ホ長調K.543
レオニダス・カヴァコス Leonidas Kavakos (弾き振り)
カメラータ・ザルツブルグ Camerata Salzburg
Recorded at: Athens Concert Hall (Megaron) Recording Centre at the Hall of the Friends of Music on February 14th-17th 2006.
82876842412 (P)(C)2006 SONY BMG MUSIC (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records

最近,DECCAからベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集ブラームスの協奏曲をリリースして気を吐くカヴァコスのモーツァルトです。この人のヴァイオリンは透明感があって美しいです。まるで小鳥のさえずりのようです。やはり線は細いのですが,それでも生き生きとしています。カデンツァは全てカヴァコス氏自身によるものですが,曲に自然にとけ込んで良い感じに収まっています。これは良い全集でした。

交響曲第39番の方は,第1楽章がやや暴走気味でガチャガチャと少々やかましく聴こえますが,その後の楽章は落ち着いた,しかし溌剌とした音楽を聴かせてくれます。

録音ですが,残響を抑え気味にしてソロもオーケストラも質感豊かに明瞭に,そして分離良く捉えていて気持ちよく聴くことが出来ます。オーケストラとソロのバランスも適切です(もう一歩ソロに寄っても良いとは思いますが)。雑味の少ない,まずまずの好録音です。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番,第5番
矢部達哉(Violin)/室内合奏団“秀”
2012年5月26-28日 水戸芸術館コンサートホールATM
EXTON OVCL-00482 (P)(C)2012 Octavia Records Inc. (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
この人は本当に伸びやかで美しい音色を奏でますね。ほれぼれします。音楽の喜びに満ちています。技術力の高さ,安定感も抜群です。これ以上言うことはありません。オーケストラの方は,弦楽器の編成が 5-4-3-2-1 の小編成で,高域寄りのように思いますが,全体のバランスは良いと思います。四方恭子さんがコンサートミストレスを務める指揮者を置かないアンサンブルのようですが,キチッとまとまっていてソロをよく引き立てているのも好印象です。

録音ですが,楽器の質感を良く捉えているものの,若干残響が多めで付帯音としてまとわりつくのが少し鬱陶しく感じられます。少し演出がかって聴こえるのがいやなのと,せっかくの小編成オーケストラを活かす録音ではないというところに不満を感じます。ただ,響きの質は悪くないので心地よいと感じる方もおられると思いますし,優秀録音と評価されても不思議ではない録音ではあると思います。私の好みと方向性が異なるだけです。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
フランク・ペーター・ツィンマーマン(Frank Peter Zimmermann)(Violin)
イェルク・フェルバー(Jorg Faerber)(Conductor)
ハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団(Wurttembergisches Kammerorchester Heilbronn)
I.1986 & III.1987, Kirche auf der Karlshohe, Ludwigsburg & III.1984, Krenzkirche, Heilbronn
5 69355 2 (P)(C)1996 EMI Records, Ltd. (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jp

ドイツの中堅ヴァイオリニスト,フランク・ペーター・ツィンマーマンのモーツァルト。ツィンマーマンがモーツァルトの協奏曲を録音していたとは知りませんでした(実はベートーヴェンの交響曲全集が良かったハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団を調べていて偶然発見)。1984~1987年の録音なので,もう20年以上前,20歳台前半の録音ということになるでしょうか。

彼らしいというか,非常に真面目なモーツァルトでちょっと力が入りすぎているように思います。最近の演奏の傾向から見るとかなり堅苦しい感じがしますし,ヴィブラートを大きくかけて力強く歌うところにも時代の流れを感じてしまいます。今の彼ならどんな演奏をするのか聴いてみたい気がします。

録音ですが,残響を多めに取り入れながらもEMIにしてはかなりすっきりと聴きやすく,ソロもそれなりにフォーカスされていて悪くありません。室内管弦楽団との演奏というのも功を奏しているのかもしれません。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
ギドン・クレーメル(Gidon Kremer)(Violin)
クレメラータ・バルティカ(Kremerata Baltica)
Recorded live in concert at Haus fur Mozart, Salzburg, August 11, 2006
7559-79886-3 (P)(C)2009 Nonesuch Records Inc. (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineAmazon.co.jp

レコード芸術誌の2009年度のレコード・アカデミー賞銀賞を獲得した名盤。皆さんの方がよくご存じかもしれません。遅ればせながら聴いてみました。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲といえば,カトリーン・ショルツの全集が一番好きなのですが(そんなにたくさん聴いていませんが),ショルツの演奏はどちらかといえば個性を追求するよりもその曲の持つ本質的な美しさを引き出そうとするようなアプローチでした。対してこのクレーメルの演奏はその対極ともいえるアプローチで,クレーメルだからこそ許される,そして受け入れられる極めて個性的なものですね。正直に言うとまだこの演奏にはついていけないところがあります。

私がこの演奏で気に入ったのはクレメラータ・バルティカのバックの方で,雄壮とも言える気合いと勢いに今までの演奏にない新しさを感じました。クレーメルの偉いところは既成概念にとらわれず常に新たな可能性を追い求めてそれを形にし,こういう超古典にも新たな命を吹き込んでいくところだと思っています。

モダン楽器奏者はクレーメルのようにもっと挑戦的になって欲しい。今はまだまだピリオド楽器奏者の方がずっと挑戦的に思います。作曲家は生みの親,そして演奏家と聴衆は育ての親。作曲家が残した素晴らしい曲という赤ん坊の無限の可能性をいかに引き出し育てていくかが演奏家と我々聴き手の役目ですね。

録音ですが,少し残響を伴っていて音色に若干の曇りが感じられるものの,全体としては比較的すっきりと見通しよく捉えているので印象は悪くありません。もちろん私としてはもっと残響を抑えて透明感ある音でくっきりと捉えて欲しいと思っていますが。
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
ヴァイオリン協奏曲第一番~第五番,協奏交響曲K.364
ジュリアーノ・カルミニョーラ(Giuliano Carmignola)(Violin)
クラウディオ・アバド指揮(Claudio Abbado)(Conductor)
モーツァルト管弦楽団(Orchestra Mozart)
Recording: Bologna, Salone Bolognini, 11/2007
ARCHIV 00289 477 7371 (P)(C)2008 Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

評判のモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全集,アバドとカルミニョーラの参加しているブランデンブルク協奏曲を聴いて,遅ればせながら聴いてみることにしました。ピリオド楽器による演奏でピッチもA=430Hzとのことです。

それにしても自由奔放に跳ねまくる。これぞピリオド・アプローチ!なのかどうかは見識のない私にはわかりませんが,私はこの演奏を聴いてフィドラーの大道芸を見ているかのような錯覚を覚えました(^^;。バロック音楽とのつながりを改めて認識したとのレビューをWeb上でいくつか見かけましたが,私はこれを聴いて,バロック音楽とフィドルの伝統音楽との接点を感じました。こんな風に感じるのは私だけでしょうか?

いずれにせよ,このようなある意味型破りな演奏が出てくること,世の中で受け入れられていることは, 喜ばしい傾向かなと思います。

(Side Bからの移行記事)[モーツァルト][協奏曲][ヴァイオリン]
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モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
ヴァイオリン協奏曲第一番~第五番,アダージョK.261,ロンドK.373,ロンドK.269
カトリーン・ショルツ(Katrin Scholz)(Violin and direction)
ベルリン室内管弦楽団(Kammerorchester Berlin)
Berlin, Christuskirche, 10, 11/1997
BERLIN Classics 0184002BC (P)1998 (C)2006 edel records (輸入盤)
 愛聴盤   リファレンス音源  好録音度:★★★★★
参考url: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records

ハイドンのヴァイオリン協奏曲があまりに良かったので,モーツァルトもきっと良いはずだ!と思って聴いてみました。結果,大当たりでした! ハイドンと録音時期は異なりますが,受ける印象はほぼ同じです。ショルツ氏の音色は輝いていて本当に美しいです。

演奏も素晴らしいのですが,録音も負けず劣らず素晴らしいです。残響を伴っていて若干音色に影響を及ぼしているので完璧に満足しているわけではないのですが,好録音度としてはあえて五つ星としました。ソロの音色の透明感,輝きがほとんど損なわれず極めて美しく聴こえてくること,そして,小編成オーケストラの内声の動きまで明瞭に聴こえてくる見通しの良さ,この二点に尽きます。オーディオクオリティもそこそこ高く,残響の質も悪くはないので,「優秀録音」としても通用するかもしれません。

めでたく愛聴盤の一枚に追加されました。

なおカデンツァは,第一番~第三番がショルツ氏自身,第四番・第五番がヨアヒムとのことです。

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