好録音探求

 『演奏者の存在を身近に感じられる録音』を求めて・・・
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
ピエール・フシュヌレ Pierre Fouchenneret (Violin)
ロマン・デシャルム Romain Descharmes (Piano)
2015年3月5-9日 フランス,シェルブール,ル・トリデン
AP129 (P)(C)2015 Little Tribeca (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV Onlineicon

グリュミオーを想起させる甘美な音色が美しいですねぇ。演奏は謙虚で丁寧,ちょっと大人し過ぎるようにも思いますが,彼の持ち味が活きる演奏ではあると思います。

録音ですが,わずかに残響感はあるものの控え目であり,楽器音に対する影響は少ないです。ヴァイオリンに対してピアノが後方に大きめに広がる点はヴァイオリン・ソナタの録音として適切に思います。ヴァイオリンの捉え方が少し弱めで音色がわずかにくぐもって聴こえるのがすごく惜しいです。もう少しクリアでヌケの良さが欲しかったです。悪くはないのですが...
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
イザベル・ファン・クーレン Isabelle van Keulen (Violin)
ハンネス・ミンナール Hannes Minnaar (Piano)
2014年8月30日~9月5日,ベルギー,メヘレン,Motormusic Studio
CC72650 (P)(C)2014 Challenge Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

オランダを代表するヴァイオリニストの一人,イザベル・ファン・クーレンが2014年に録音したベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集。比較的好みの録音が多いChallenge Classicsのディスクを物色していて見つけました。

モダン楽器による演奏ですが,大胆にピリオド的な奏法を現代的な感性で取り入れた極めて個性的な演奏と思いました。楽器を存分に鳴らし切るような弾き方ではなく,モダン楽器の良さをあえて殺しているようなところもあるので,モダン楽器が好きな私としては少し微妙でもどかしさを感じるところもあります。一般的な評価も大きく分かれそうな演奏です。とはいえ,もちろん技術的には優れていますし,一つのポリシーを貫いた演奏として楽しむことが出来ますね。

それで肝心の録音なのですが,ヴァイオリンもピアノも直接音を主体に透明感のある綺麗な音色で録られているのでかなり良い印象です。この点は期待通りで好録音と言えます。バランスとしてヴァイオリンが対等からやや弱めに感じられ,少し距離感もあるので,もう少し近寄って質感高く捉えてくれていれば文句なしだったのですが,惜しいところです。
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
ルノー・カプソン Renaud Capuçon (Violin)
フランク・ブラレイ Frank Braley (Piano)
2009年9月16-20日 スイス,ラ・ショー=ド=フォン,ルール・ブルー,テアトル・サル・ド・ミュジーク
9996420010 (P)2010 EMI Records/Virgin Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconApple Music

モダン楽器らしい現代的でスマートな演奏ですね。力強くアクセントも効いていますし,明るく歌心にも溢れ,生き生きと喜びに満ちているのが素晴らしいです。音色も美しくこの奏者の美質が最大限活かされています。過剰な演出や違和感を覚える表現は一切なし,シンプルかつ自然で素直に音楽を受け入れられます。

録音ですが,少し残響感があり,楽器音に被りが感じられるものの,音色の美しさは保たれており,楽器の質感,ニュアンスも豊かに感じられます。きめの細かさ,高域の伸びもあり,まずまず良好な録音と言えると思います。満足する録音ではありませんが,まあ納得はできるかなと。

この全集,最近聴いた中では最も気に入りました。長く付き合えそうな気がします。愛聴盤候補になりました。
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第1番,第3番,第4番
庄司紗矢香 Sayaka Shoji (Violin)
ジャンルカ・カシオーリ Gianluca Cascioli (Piano)
2011年9月 ハンブルク
UCCG-1585 (P)(C)2012 Universal Classics & Jazz (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconiTunes Store
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」,第6番,第10番
庄司紗矢香 Sayaka Shoji (Violin)
ジャンルカ・カシオーリ Gianluca Cascioli (Piano)
2011年9月(No. 5),2014年7月(Nos. 6 & 10)
UCCG-1700 (P)(C)2105 Universal Classics & Jazz (国内盤)
好録音度:★★★★
参考: Tower RecordsAmazon.co.jpHMV OnlineiconiTunes Store
この5月に第5番,第6番,第10番が発売され,計4枚の全集が完結しました。そのうちの2枚。

変な言い方ですが,この演奏を聴いて庄司さんは生粋のクラシック音楽家なんだと実感します。リズムの感じ方がクラシックそのもの。このようなリズム感の演奏は乗れないので好きになれないことが多いのですが,この演奏は例外。音の彫り深さ,多彩な表情や思い切りのよい表現が印象的で惹き付けられます。さすがです。これはベートーヴェンをというより庄司さんの芸を楽しむディスクかなと思います。

録音ですが,やや残響が多めで楽器音に被って音色を損なっています。空間性の表現よりも音色への影響が大きくこの点ではあまり良い印象ではありません。音色のバランスが崩れて高域も変に刺激的ですし,音像も奥まっていてもどかしさがあります。とはいえ音の曇りは最小限に抑えられているので何とか我慢できる範囲です。残響が許せる方は問題ないかもしれません。
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
イザベル・ファウスト Isabelle Faust (Violin)
アレクサンドル・メルニコフ Alexander Melnikov (Piano)
Teldex Studio Berlin, 2006年(Kreutzer), 2008年
HMC 902025.27 (P)2009 harmonia mundi s.a. (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
繊細で柔らかく優しい表現から力強く激しい表現まで,そしてそれが曲想に応じてダイナミックに変化していく,表現の幅の広さに感嘆します。フォルテでは意図的だとは思いますが,音がつぶれ気味になるところまで力を込めていて,このあたりは好みが分かれるところだとは思います。淀みも「ため」もなく前のめりに曲を推進するリズム感もいいですねぇ。

そしてファウストのヴァイオリンと並んでピアノがすごく良いです。対等と言いながらもやはりヴァイオリンが主役というイメージが強いベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタにおいて,これほどの存在感を示すとはなかなかのものです。(この曲でピアノに心動かされるのは初めてかもしれません...)

これはなかなか聴き応えのある素晴らしい全集でした。

録音ですが,残響は控えめなのでまずまずなのですが,少しヴァイオリンが遠めで明瞭感,質感の低下が否めません。細部が見えそうで見えないもどかしさがあります。中では,2006年に録音されたクロイツェルが最も良く,その他の曲は少し落ちる感じです。もう一歩寄って生々しさを出して欲しかったと思います。惜しいです。
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
レオニダス・カヴァコス Leonidas Kavakos (Violin)
エンリコ・パーチェ Enrico Pace (Piano)
The Athens Concert Hall, Sep. 2011, Feb. and Apr. 2012
478 3523 (P)(C)2012 Decca Music Group Ltd. (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
カヴァコス氏は1967年生まれ,ギリシャ出身のヴァイオリニストで,1985年のシベリウス国際コンクール最年少で優勝した経歴の持ち主。カヴァコス氏の演奏では,BISから発売されているシベリウスのヴァイオリン協奏曲原典版と現行版のディスク(→HMV Online)とバッハ無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番,パルティータ第1番のディスク(→CD試聴記)を聴いたことがありますが,録音が良くなかったこともあってか,あまり印象が残っていませんでした(N響?と共演したシベリウスの協奏曲の放送を見たときに,妙にオッサンくさい人だなぁと思った記憶はありますが...(^^; ジャケット写真では精悍な感じに写っていますね)。

このベートーヴェンですが,控えめながら節回しの巧さが光っていますし,音色も少し細身かなとは思いますが透明感があって美しいです。技術力も高いです。現代的なスマートさを備えた佳演だと思います。

録音も最近のDECCAにしては響きが控えめで明瞭感があり,音の伸びもあって良好です。ヴァイオリンとピアノのバランスも適切です。私としてはもう少しヴァイオリンの質感を強めに捉えて欲しかったとは思いますが,これでも納得はできます。

演奏も録音も優れた良い全集だと思います。これからの録音にも期待したいと思います。
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
クリストフ・バラティ Kristóf Baráti (Violin)
クララ・ヴュルツ Klára Würtz (Piano)
3-9 Nov. 2011, 24-28 Feb. 2012; Liszt Ferenc Concert Hall
94310 (P)(C)2012 Brilliant Classics (輸入盤)
好録音度:★★★☆
参考: HMV OnlineiconTower Records
速いテンポで躍動感にあふれ,颯爽と音楽が流れていく爽やかな現代的快演。ヴァイオリンも良いのですが,ピアノも粒立ちが良くコロコロと気持ちよく転がっていく(!?(^^;)のが気に入りました。数多の優れた演奏と比べても遜色ないのではないでしょうか。

録音ですが,残響はそれほど多くなく演出色も少ない(生録的)のは良いのですが,マイクポイントが少し離れているのか,ヴァイオリンの音は間接音成分でやや濁っていて冴えません。ピアノはそれほど濁っていないのが救いですが。バランスとしてピアノがやや大きめでヴァイオリンが弱いのも不満です。もう少しヴァイオリンを明瞭に質感高く捉えて欲しかったと思います。まあ実はそんなに悪くはないと思うのですが,あまり「こう録りたい」という主張が感じられず,漫然と録ってしまったような印象を受けてしまいます。演奏が良いだけに特に...本当にもったいないです。

ちなみに,バラティ氏はバッハの無伴奏ヴァイオリンを二度録音しています(1回目2回目)。

蛇足ですが,ジャケット写真の二人の目が緑色で写っているので霧の民かと思ってしまいました(^^;。
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第1番,第4番,第7番,第8番
Recorded live at Wigmore Hall, London, on 27 October 2009
WHLive0036 (P)(C)2010 Wigmore Hall Trust (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第2番,第5番「春」,第10番
Recorded live at Wigmore Hall, London, on 23 February 2010
WHLive0041 (P)(C)2010 Wigmore Hall Trust (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第3番,第6番,第9番「クロイツェル」
Recorded live at Wigmore Hall, London, on 25 May 2010
WHLive0045 (P)(C)2010 Wigmore Hall Trust (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: HMV OnlineiconAmazon.co.jpTower Records
アリーナ・イブラギモヴァ Alina Ibragimova (Violin)
セドリック・ティベルギアン Cedric Tiberghien (Piano)

ニュアンス豊かで流麗な音の流れに心躍り,ひんやりと冷たく透き通った美しい音色に思わず聴き入ってしまう,これは本当に素晴らしかった! こんなに息吹を感じるフレッシュな演奏に触れるのは本当に久しぶりという気がします。作為のない素直でストレートなところもいいですね。モダン楽器として至極真っ当に進化を遂げた現代的な演奏ではないかと思います。

で,一方の録音ですが,残響は多くないものの,今ひとつすっきりせず冴えません。オフマイク気味で高域が減衰してしまっているような感じで,質感も感じ取りにくいです。低域の下支えも感じられず,実在感が希薄です。もっと楽器に寄ってクリアに録って欲しいものです。ピアノはまだマシですが,逆にその分ヴァイオリンが奥まってしまっています。まあそんなにすごく悪いわけではないのですが,演奏が良いだけにちょっと残念に思います。
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
アーロン・ローザンド Aaron Rosand (Violin)
エイリーン・フリスラー Eileen Flissler (Piano)
録音:1961年
CDX3 3503 (P)(C)1995 THE VOX MUSIC GROUP (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考: Amazon.co.jpTower Records
この人の演奏を聴いていると「ヴィルトゥオーソ」という言葉が浮かんできます。私のこの感覚とこの言葉の定義が合っているかは自信がありませんが,とにかくそんな感じなのです(^^;。技術のキレの良さが前面に出る個性的な演奏ですが,嫌みがなくひたすら明るいのがいいですね。そういうところが好きです。

録音ですが,1961年の録音なのでクオリティは高くありませんし,音色も古臭いのですが,残響を控えめにして楽器の音をストレートに明瞭に捉えています。古臭いといっても高域は必要十分に出ていてヌケも悪くなく,何ら不満を感じません。

もう廃盤になってからかなり経つのか,あまり入手性が良くないのは残念なことです(入手困難ではないですが)。

試聴: iTunes Store (※注 iTunesのインストールが必要かもしれません)
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第一番,第五番「春」,第九番「クロイツェル」
メラ・テネンバウム(Mela Tenenbaum)(Violin)
リチャード・カップ(Richard Kapp)(Piano)
Recorded at ICN Polyart Studio, January 7 & 8, 2002
ESSAY CD1083 (P)(C)2004 S. A. Publishing Co., Inc. (輸入盤)
好録音度:★★★★
参考url: amazon.com

メラ・テネンバウムはバッハ無伴奏ヴァイオリンの全集も録音しています。あまり知らないのですが,中堅ヴァイオリニストではないかと思います。この演奏も手堅い感じのするしっかりした好演奏ですが,深く大きなヴィブラートをどんな短い音でもかけてくるあたりが特徴的です。最近このようなヴィブラートをかけるヴァイオリニストが少なくなった気がするので,かえって新鮮に聴こえたりします。

録音ですが,比較的近い距離で楽器の質感を良く捉えていますが,響きもそれなりに取り入れられていて少し音がくすんですっきりしません。客観的にみて悪くはないと思いますが,私の好みからすると少し惜しい感じです。

このCDをどこから手に入れたのか記憶が定かではないのですが,amazon.comのマーケットプレイスで出品されているのを見つけました。
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
ダヴィド・オイストラフ(David Oistrakh)(Violin)
レフ・オボーリン(Lev Oborin)(Piano)
Recorded: Le Chant du Monde, Paris, 1962.
468 406-2 (P)1964 Philips Classics (P)(C)2001 Philips Classics (輸入盤)
好録音度:★★★★☆
参考url: HMV Onlineicon

LP時代からの愛聴盤です。言わずと知れた名盤中の名盤ですね。当時,評判が最も良かったのでこれを選んだ記憶があります。

この全集が愛聴盤である理由が大きく二つあります。一つはこの演奏が持つ室内楽的な雰囲気で,もう一つは録音の良さです。

私の「室内楽」のイメージは,自分たちが自分たちの楽しみのために演奏する,あるいは仲間内で演奏者を囲んで一緒に楽しむ,といったものです。こういう場合,自ずとコンサートで演奏するのとは弾き方が変わってきます。そして,この演奏からは,そういった雰囲気を,そしてそこからくる楽しさ,優しさ,暖かさを感じるのです。私が他の演奏から受けるオイストラフという「巨匠」のイメージとは少々違うように思います。コンサートで聴く室内楽ももちろんいいのですが,やっぱり室内楽はこういう風に楽しみたい。

そして,この録音がまた秀逸! 古い録音なので高域の抜けが悪くすっきりしないところはありますが,邪魔な響きは全くなく,絶妙の距離感で楽器音を捉えています。演奏とその音の捉え方が素晴らしくマッチして最高の音楽を届けてくれます。

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは,私としてはこの全集1セットあればそれでもういい,そう思ってしまいます。

(Side Bからの移行記事) [ベートーヴェン][室内楽曲][ヴァイオリン]

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